「食べても死なない。でも激痛が1カ月続く」キノコライター・堀博美が毒キノコにひかれる理由【死ぬ前にやっておくべきこと】

ベニテングダケに一目惚れ(C)週刊実話Web

危険と分かっていても、知りたくなる

地球に棲息するあらゆるキノコに出会いたい──。そんな堀の目が最も妖しく光るのは、やはり毒の話をするときである。

「毒キノコはどうしたってミステリアスで、つい情報を集めたり、生えているのを見に行ったりしてしまう。なかでもドクササコには気を引かれます。食べても死にません。でも指という指がパンパンに腫れ上がって、その激痛が1カ月続く。痛みのあまり亡くなった人もいたそうです。ただ、本で扱うには、細心の注意が必要です。この本を読んだせいで死んだなんてことになったら大ごとですから」

見分けは容易ではない。かつて堀自身も毒にあてられたことがある。

観察会でポコンと生えていた美味そうな一本。周りが「オオイチョウタケや、これはいけるで」と言うので、つい気が緩んで持ち帰った。食べてみると、まるで美味しくない。それでも料理した手前、全部平らげた。3日後、腹が壊れた。単独で生えることが稀なキノコだという情報を聞き流したのが敗因である。

仲間には「3日も経って出るなんて絶対ほかに原因がある」と笑われたが、他に怪しいものは食べていない。あれが何だったのか。30年追いかけても分からないものは分からない。

山にはまだ名を持たないキノコが黙って生えている。だから堀の探求心は止まらない。いつか聞いたことがある、南半球にしか生えない、風船のような姿のキノコ。原住民は長い棒で叩き落とし、生のまま食べていたという。

それをいつか見たくて、研究する学者に話を聞きに行ったこともあった。だが、その人は病を得て、若くして逝ってしまった。

「早いうちに聞いておいて良かったと思う反面、あんなに若い人がそんなに早く逝くなんて……と。難しい気持ちになりましたね」

年を経るごとに探求心は高まり、この地球上で行きたいキノコの場所のリストは、ノート1ページ分はあるのだが、最近どこに置いたのか、忘れてしまったらしい。
 (後編に続く)

「週刊実話」10月1・8日号より