「食べても死なない。でも激痛が1カ月続く」キノコライター・堀博美が毒キノコにひかれる理由【死ぬ前にやっておくべきこと】

キノコライターの堀博美(C)週刊実話Web

村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前にやっておくべきこと」。キノコライターの堀博美をインタビュー(中編)。キノコに対する熱い思いをたっぷり語っていただいた。

東北では狂喜乱舞、英国では肩透かし

ひとくちに「キノコが好きだ」と人は言う。だがその一口の中には、驚くほど多くの宗派がある。

「私もすべてを確認できているわけではありませんけども、山に分け入って狩るのが好きな“狩り菌”。写真を撮るのが好きな“撮り菌”。狩るだけじゃなく、売っているきのこをいかに毎日食べるかに注力する“食べ菌”。グッズを集めずにはいられない人を“グッズ菌”と呼ぶのかどうか知りませんけども。私はどっちかというと狩り菌とグッズ菌ですね。一度、グッズをテーマにした同人誌の企画をちらっとお見せしたら、お客さんに『いや、キノコは好きやけどグッズはちょっと』みたいな顔をされまして。同じキノコ好きでも、越えられへん壁があるんやなと」

菌と書いて「きん」。この一文字、古くは「くさびら」と読んだ。滋賀県には、その名も菌神社が鎮座している。神を祀るほどに、この国の民とキノコの縁は深い。

堀博美が籍を置くのは、日本菌学会、関西菌類談話会、千葉菌類談話会の3団体。
「談話会というからには、和やかにキノコの話をするんやろなと思って入ったんです。そしたら名前を覚えるテストをやってみたり、みんなの前で暗唱させられたり。えらいところに来てしもたと思いましたけど、関西には他に入るところがあんまりない。年会費2000円ですし、京都に住んでるなら入っておく価値はあります。千葉のほうはコロナ以降うっかり会費を払い忘れてまして、たぶん除名になってるんちゃうかな」

キノコの熱は、土地によって温度が違う。

「特に、北と東はすごいんです。秋になったらキノコ好きたちが狂喜乱舞するというぐらいの熱がある。関西は残念ながらそこまでの熱ではなくて、『勉強したい』とか、『写真を撮りたい』とか、そういうニーズのほうが多いですね。なんで関西と東北がこんなに違うのか。一言で言うなら、分かりやすい“食べられるキノコがたくさん出るかどうか”やと思います」

堀は、キノコのためだけに幾度か東北へ渡っている。市場に野生のキノコ専門店を発見したときは、文化的な衝撃を受けた。関西で同じことをやれば中毒が連発するだろう。それほど東北の人はキノコを知っている。宮沢賢治があれほどキノコラブの詩を書けたのも、農学者であり、東北人だったからだろうと堀は分析する。

そして、南もまた違う。沖縄や石垣島には熱帯のキノコ。しかし、沖縄にしか生えなかった毒キノコ・オオシロカラカサタケが、北海道に届くところまで来ているという。魚が北上する話は聞いていたが、動かぬはずのキノコまでもが静かに列島を這い上がっていた。

そして、海の外には、キノコの王国がある。

「去年行った中国・雲南省は、中国の中でもキノコがすごい地域だとされていて、北京の人が『私はそんなキノコ食べたことない』と言うくらい、春は花、夏はキノコという土地柄で、日本では食べられないキノコを食べさせてもらいました。まぁ、年間4000人が中毒するらしいですけど、それだけキノコが暮らしの中にある。一方でイギリスは、キノコが一大ブームやという記事を読んで勇んで行ったんですけど、スーパーを何軒回ってもマッシュルームばかり。誰やねん、ブームや言うたやつは」

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