サクラバクシンオーからアグネスデジタルまで…競馬記者が選ぶスプリンターズS名場面前編

②ヒシアケボノ(1995年)
超ド級560キロの黒船! 大相撲ブームに沸く日本を震撼させた「世紀の肉弾逃げ切り」

ヒシアケボノ

サクラバクシンオーが引退し、絶対王者不在と言われた1995年のスプリント界。そこに突如現れ、競馬界の常識を文字通り「力」でねじ伏せたのが、外国産馬ヒシアケボノだ。

この馬の最大の特徴は、パドックで誰もが目を見張る規格外の巨体。この年のスプリンターズSでの馬体重はGⅠ史上最高記録となる「560キロ」をマーク。当時大活躍していた横綱・曙にちなんだその馬体は、圧倒的な威圧感を放っていた。

角田晃一騎手を背に1番人気の支持を集めると、巨体を揺らして猛然と先行。圧巻は中山の直線だった。他馬が小さく見えるほどの破壊的なストライドで急坂をものともせず突き進み、猛追するビコーペガサスらを力でねじ伏せて快勝。短距離王の座へと登り詰めた。

規格外のパワーと愛嬌を兼ね備えた「動けるデカブツ」の快挙は、平成のオヤジファンを大いに熱狂させ、今なお伝説として語り継がれている。

③フラワーパーク(1996年)
「1センチの執念」田原成貴と名馬が演じた、エイシンワシントンとの死闘

フラワーパーク

1996年のスプリンターズSは、日本の競馬史に残る「最も劇的な写真判定」として語り継がれている。

主役は、その年の高松宮杯を制して春秋スプリント連覇を狙う牝馬フラワーパークと、悲願のGⅠタイトルに燃えるエイシンワシントン。直線、2頭は他馬を完全に置き去りにして、激しい叩き合いを展開。並んだままゴールインした瞬間、場内は静まり返った。

写真判定はなんと10分以上にも及び、結果はフラワーパークが「わずか1センチ」先着。鞍上の田原成貴騎手が魅せた、馬の首をグッと押し出すような執念の追いが、この1センチを手繰り寄せたのだ。

非エリートの血統から短距離女王へと登り詰めた彼女の根性と、天才・田原の美学がシンクロした、究極の名勝負である。