「真っ赤な傘に一目惚れ」キノコを30年追い続ける“キノコライター”堀博美の偏愛人生【死ぬ前にやっておくべきこと】

堀の代表作『きのこる〜キノコLOVE111』(C)週刊実話Web

毒の洗礼にもめげず始まった“菌トレ”の日々

そんな堀がキノコに目覚めるきっかけとなったのは今から30年ほど前の1995年。大学生だった彼女の目を奪ったのは、図鑑にあったベニテングタケの真っ赤な傘だった。

「真っ赤な傘に白いイボ、すらりと伸びた柄のキノコを見て一目惚れしてしまいました。ただ、このベニテングタケは関西に生えないというので、友達と長野まで見に行こうと高原に行きまして、ラッキーなことに何本も自生している現物を発見できたんです。それは自分の想像をはるかに超えるかわいさ、立派さでありました。赤いきれいな傘に白い点々が付いていて、ものすごくステキな感じでありながら、毒キノコだという危うさを併せ持つ、この何とも言えない感動と素晴らしさをどうにかしなければと、今でいう“ZINE”(個人や少人数のグループが自由に作る小冊子のこと)にしようとなったのが、キノコを書き始めたきっかけになります」

ちなみに、かわいらしいベニテングタケの魅力にハマってしまった堀は、持ち帰ったベニテングタケを友達と食べてみた。その美味しさに頬を緩めながら、ちょっとした幻覚に襲われ、一緒に食べた友達が「飛び降りなければならない!」と騒ぎだすなど、ちょっとした毒キノコの洗礼を潜り抜けながらも、そこから「キノコのことをもっと知りたい!」と、休みの日には京都の山に登って「菌トレ」と称してはキノコを観察し、街に出てはキノコグッズを探して歩く、キノコ趣味にのめり込んでいく。

「私が最初に買ったキノコグッズはホームセンターにあったツボを押すキノコだったんですけど、90年代当時はまだキノコグッズ自体の絶対数が少ないうえに、おしゃれなものはほとんどなかったんですね。ただ、キノコはどんなところにもあります。私は扇進次郎さんが言わはった『くらしにきのこを!』という言葉に心惹かれてしまいましてね。この言葉の意味は、例えば毎日の食卓にもキノコを上げたり、休みの日には山に行って眺めるもよし、町にグッズがなくても、文学や映画にキノコは登場するので、文化・芸術的にもキノコのおかげで豊かになれるものだと、私は解釈しております。本当にオールマイティーな存在ですよ。特に日本人はキノコに親しみの深い民族です。各地にキノコ観察会などもありますし、キノコ好きの方は一般の方が思う以上に多いでしょう」
 
確信を込めて言う堀の言葉にふと周りを見てみれば、我々はキノコに囲まれて暮らしていることに気付く。スーパーのキノコの種類はいつの間にか増え、キノコゲームことスーパーマリオは40年、きのこの山は50年、NTTのドコモダケは20周年と息が長い。

「キノコ好きと言ってもキノコの魅力の数だけ、キノコ好きの嗜好も違います。キノコの味が好き、見た目が好き、キノコのアートが好き。本を書く方としてはテーマはいくらでもある。それだけ深い世界ですから」 (中編に続く)

「週刊実話」9月17・24日号より