「ベイスターズ一点突破は無謀」それでも都内に“ベイファンの聖地”を作った女性の執念【死ぬ前にやっておくべきこと】

ベイスターズカフェ&バー『スターエール』のオーナー・セツ子(C)週刊実話Web

村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前にやっておくべきこと」。都内でベイスターズカフェ&バー『スターエール』のオーナー・セツ子をインタビュー(中編)。横浜DeNAベイスターズに対する熱い思いをたっぷり語っていただいた。

絶好の物件、資金不足…開店までの綱渡り

「都内にベイスターズの店を出したい」

そんな夢みたいな目標だけを決心してしまった都内で働く会社員のセツ子。

プロ野球でも入団してから5年でクビになるのが約3割。それに比べて開店から3年で半分以上が淘汰されるのが飲食店の世界だ。

セツ子もそのことは重々理解していた。一度出直すべきか。

そんな弱気に陥っていた時に舞い込んだ、セツ子が一目惚れした物件からの吉報。場所は大塚駅の外れ。商店街から一本奥に入った目立たぬ場所だったが、何よりも店の中央に鎮座する165㌅の超大型モニターはどこにもない魅力であった。

「これでベイスターズ戦を流せたら、どれだけ迫力ある試合が楽しめるのだろう」

そんな憧れの店舗には、すでに先約が3名も申し込みがあり諦めかけていたが、奇跡的に前の3名が審査に落選し、順番が回ってきた。

「驚きました。まさか4番目の申し込みだった私に順番が来るとは思ってもいなかったですからね。ただ、審査に落選した人たちは“個人”の申し込みで、法人でなければ審査に不利なことが分かりました。しかも、開店資金も私が貯金してきた金額では間に合わない。でも、こんなチャンスはもう二度と巡ってこない。私は決心をしました。勤めていた会社の社長さんに洗いざらい事情を話し『会社の名義と開店資金をお借りできないか』とお願いしたんです。額だって少ないものではないし、会社の名義だって信用問題に関わるから、簡単には貸せませんよ。でも……社長は承諾してくれたんです」

セツ子の無謀な願いは聞き届けられた。ベイスターズファンのための店をやるのに、ファンの姿など見たことがない東京で、ベイスターズ一点突破の店である。

数字のみで動く冷静な経営者がこの事業に融資することなど、通常で考えればありえないだろう。ただ一つ、“社長がベイスターズファンである”こと以外は。

社長が笑いながら言う。

「経営者としては絶対にありえない話ですよ。飲食をやっている友人に相談したら、『サッカーや複数の試合を流すならまだしもベイスターズ一点突破は無謀』と一笑に付せられました。セツ子は社業でも、やると決めたことは何があっても必ずやり遂げるし、1人で3人分ぐらいは働いてくれる。経営は未経験だけど、うちに来る前は数ある飲食店でキッチンを任されるぐらい料理の研究は鬼のようにしてきたし、彼女ならやってくれるんじゃないかなという淡い期待もあります。それに、セツ子を初めて野球場に連れて行ったのも僕なんです。彼女を強度のベイスターズファンにしてしまい、店を出すと言い出した責任の一端は僕にも少しあるんじゃないかと思いまして……」

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