「100円のレコードが人生を変えた」野球音源収集家・FPM中嶋が明かす“沼の入口”【死ぬ前にやっておくべきこと】

タンポポ『BE HAPPY 恋のやじろべえ』(C)週刊実話Web

野球音源はまだ掘り尽くされていない

終わりそうでも終わらない。それが長く続けることの秘訣なのかもしれない。音楽と野球の祭典である『音の球宴』も今年、長い活動休止期間から奇跡の復活を遂げた。そして、中嶋の生涯事業であるプロ野球音源の収集は、プロ野球選手が歌うことを止めた21世紀に資源が絶望的に枯渇する問題に直面するも、「家族モノ」というジャンルを開拓し、危機を乗り越えた。

「自分の収集範囲で手に入れられるものは入れたタイミングでもありました。やめようと思えばやめられたんですが、AKB48に倉持明の娘さんが在籍していると知ったんですね。さらには大沢親分の孫・大沢あかねがCDデビューするらしく記念イベントに親分が来ると聞いて駆けつけましたよ。うら若き女性ファンばかりのサイン会の列に大沢親分目当てのおっさんが一人並びながら確信していました。『家族モノ』というジャンルには可能性しかない、と。野球選手がアイドルや歌手と結婚するのは今も昔も定番。ならば奥さんや娘さんの在籍時代の音源も収集対象になり得るじゃないかと。この“嫁もの”の最高峰がハロプロの『タンポポ』第三期。メンバー4人のうち3人が、揃いも揃ってプロ野球の投手と結婚しています。歌手を夢見ながら息子のために断念した山本昌の父は、昌の引退後に自主制作CDで悲願のデビューしたことも物語がありますよね」

かくして野球音源収集はジャンルを広げ、令和となった今も継続され、中嶋の「死ぬ前にやるべきこと」と宣言した“野球音源のアーカイブ化”は、さらに積み上がっていく。

「目指しているのはオーソリティーではないんです。野球殿堂博物館の一コーナーとかではなく、野球DJのイベントで“こんなレコードを見つけました”と、みなさんに聴いて楽しんでもらう。これが一番だと思っているので。特に死ぬ前にやるべきことは、続けること。それに尽きます」

レコードとは、英語で「記録」のことである。中嶋が残そうとしているのは、棚に眠る盤そのものではない。針を落とせば鳴り出す、野球と歌謡曲が肩を組んで歩いた愛すべき時代の記録だ。そして、それは博物館のガラスケースの中ではなく、回り続けるターンテーブルの上にしか残らない。一枚100円から始まった男の旅は、まだ終わらない。
 (完)

「週刊実話」8月13日号より