首・脇・鼠径部を冷やせ、救急医が教える熱中症「倒れた後」の正解【酷暑を乗り切るライフハック⑦】

昨年の搬送者は10万人超え

目の前で人が倒れた。頭が真っ白になり、声をかけることしかできなかった――そんな経験をした人は少なくないだろう。熱中症の救急搬送者が初めて10万人を超えた昨夏、死亡に至るケースの多くで「初期症状の放置」や「対応の遅れ」が原因として指摘されている。

そこには知識さえあれば救えた命が、確かにあった。今回は、もし誰かが倒れた瞬間に「あなたが何をすべきか」を、日本救急医学会のガイドラインに基づいて整理する。

「大丈夫ですか」の次にすべきこと

まず確認すべきは「意識があるかどうか」、ただそれだけだ。声をかけて反応があれば、すぐに涼しい場所へ移動させる。エアコンの効いた室内が理想だが、近くになければ日陰でも構わない。直射日光と高温環境から切り離すことが最優先だ。

ネクタイ・ベルト・上着など体を締めつけるものをすべて外し、皮膚を露出させる。この段階で、周囲の人間に「119番に電話してください」と具体的に役割を指示することも忘れずに。「誰かやって」では誰もやらない。

まず冷やせ、話はそれからだ

涼しい場所に移したら、次は体を冷やす。首・脇の下・太もものつけ根(鼠径部)など、太い血管が皮膚近くを通る部位にアイスパックや氷のうを当てるのが効果的とされている。

水をかけてうちわや扇風機で風を送る「蒸散冷却」も有効だ。意識があり自力で飲める状態なら、経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつ与える。ここで絶対にやってはいけないのが「意識が薄い人に無理やり飲ませること」だ。誤嚥(気道への誤った流入)を引き起こし、状態を一気に悪化させる危険がある。

【関連】灼熱の通勤戦線、命を守るのは“首”への冷却だった【酷暑を乗り切るライフハック②】

意識がないならためらうな

呼びかけても反応がない、もしくは反応が著しく鈍い場合は、ためらわず救急車を要請する。これは「様子を見てもよいかもしれない」ではなく、「今すぐ119番」の一択だ。

熱中症の重症度は1〜3度に分類され、意識障害がある場合は最重症の3度(重症)にあたり、命に直結する。救急隊が到着するまでの間も冷却を続け、正常な呼吸が確認できない場合は心肺蘇生(CPR)を開始する。AEDが近くにある場合は迷わず使う。体が濡れている場合はパッドを密着させるため、装着する前に水分を拭き取ることを忘れずに。

「知っていた」と「できた」は別物

今回の連載で取り上げてきたグッズや知識はすべて「備え」。しかし備えが本当に機能するのは、いざという瞬間に体が自然に動くときだけだ。今年の夏、この記事を読んだことで「倒れた人の首に冷たいものを当てる」という行動が一秒でも早く出てくるなら、それだけで命が救われる可能性がある。猛暑は待ってくれないことを肝に銘じておくべきだ。

【関連】京都・甲府が危ない…日本「灼熱都市ランキング」2026 【酷暑を乗り切るライフハック①】
【関連】「電気代より命」夏の自宅が一番危ない【酷暑を乗り切るライフハック③】

※本記事は日本救急医学会の熱中症診療ガイドラインなどを参考に作成しています。