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北朝鮮コロナ禍で未曽有の食糧危機…「飼育しやすいウサギを増やせ!」

(画像)Novikov Aleksey / shutterstock

「反省するだけなら猿でもできる!?」

北朝鮮の金正恩総書記は傲慢な独裁者でありながら、これまで何度も「反省」を口にしている。もちろん、責任をとった形跡はまったくないのだが…。

「正恩氏は権力継承から間もない2012年4月の演説で『二度と人民のベルトを締め上げさせない(飢えさせない)』と豪語しました。しかし、今年6月18日に閉幕した朝鮮労働党中央委員会総会では、あっさりと前言をひるがえし、『人民の食糧状況が逼迫している』と自分の無能さを認めています。17年の新年の辞では、『能力が思いについていかず、自責の念にかられる』とも述べていますし、昨年10月には台風の被災地で、『深く自責しなければならない』とも語っています」(北朝鮮ウオッチャー)

今年12月、正恩氏が権力を継承して10年を迎える。しかし、これまで国民に誇れる成果は何も挙げておらず、いくら素直に過失を認めても、それで済まされる問題ではない。

「今年1月の党大会で党規約を改正し、朝鮮労働党は〝総書記の代理人〟と明記した『第1書記』のポストを新設しました。これは、正恩氏に健康不安が生じた場合の備えであると同時に、もはや彼一人に任せておけないと、党中枢が判断した結果でしょう」(同)

正恩氏は今回の党総会を閉会する際に、「難局を必ず克服する」と胸を張ったが、いつぞやまた「克服できなかった」と反省の弁を述べるに違いない。

そもそも、今頃になって国家負担による『子どもに乳製品など栄養食品を供給する方針』を表明するなど、北朝鮮の政策はすべてが遅きに失した感がある。

大量の餓死者を出した90年代の惨状に匹敵

「兵役検査では、栄養が足らないのか身長や体重が規定に達しない若者が激増しています。また、国民の平均寿命も、世界的に見て男女ともに短い。にもかかわらず、新型コロナウイルスの国内流入を恐れるあまり、昨年1月末から中国との国境を封鎖し、貿易を停止するという極端なコロナ対策を講じました。市場で売られている商品の9割が中国製ですから、国境封鎖によって、国内経済が疲弊するのは当然です」(同)

最近よく使われる「絶糧世帯」という造語は、困窮を極めた末に、金も食べ物もまったくなくなった家庭のことを意味している。

「経済制裁と国境封鎖で、今や90年代に大量の餓死者を出した〝苦難の行軍〟に匹敵する惨状です。本来なら今頃は『モネギチョントゥ(田植え戦闘)』の真っ最中ですが、中国からの物流が途絶え、農業資材や肥料などが入ってこなかった。ですから田植えが遅れているか、やりたくてもできない状態にあるのです」(韓国の脱北者団体)

韓国の情報機関『国家情報院』は、今年2月の韓国国会で「今年の北朝鮮は食糧が約100万トン不足する」というレポートを発表した。これは北朝鮮の国民が食べる約2カ月分に相当する。

また、北朝鮮国民を苦しめている要因は、穀物価格の高騰にもある。6月中旬に行われた各地の市場調査では、5月末と比べて白米は1.7倍、トウモロコシは2.4倍も上昇している。

「豚や牛、鶏といった家畜を飼おうにも、その餌が人間に支給される始末なので、とても肉など口にできない。そこで、国を挙げて奨励しているのが、成長が早く、子どもでも簡単に飼育できるウサギなんです」(同)

ウサギ肉の利点について広報

北朝鮮の国営通信社『朝鮮中央通信』では、5月以降、ウサギの飼育を奨励するニュースをたびたび報じている。同通信によると、政府から「畜産業の発展のために積極的に先進科学技術を採用し、ウサギの生産量を高めよ」との要求が出され、地方政府や企業、学校や家庭に至るまで飼育運動を展開しているという。

「未曾有の食糧難に対する切り札が、ウサギの増殖というから開いた口がふさがりません。しかし、北朝鮮では本当にウサギの飼育方法を解説したアニメを制作しており、子ども向けの宣伝活動に余念がない。ウサギの飼育も〝戦闘〟と位置付けるお国柄ですから、子どもだけではなく、青少年や大人にも積極的にウサギを飼育するよう呼びかけています」(同)

朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』は「ウサギは少ない餌でも育ち、繁殖率が非常に高い家畜」と紹介し、栄養面や味覚などウサギ肉の利点について広報している。そればかりか、正恩氏までもウサギ肉を多く生産するよう積極的にPRしており、同紙によると最近は北朝鮮の各学校で、年間3000万羽以上のウサギを飼育しているという。

「実のところウサギの飼育は、過去に正恩氏の父・金正日総書記が計画しており、その二番煎じにすぎません。07年に食用で大型のハイイロオオウサギをドイツから輸入し、オス4羽とメス8羽の計12羽を繁殖させようとしました。餌を十分に与えれば1年間で約60羽を産む計算でしたが、繁殖する前に党幹部が食べてしまったそうです」(国際ジャーナリスト)

北朝鮮では、古くから精のつく食材として、犬肉が重宝されてきた。一方、ウサギ肉は健康食として、動脈硬化症の予防になると推奨されている。

しかし、低脂肪、低カロリーのウサギ肉を真っ先に食べなければならないのは、ぜいたく三昧で健康を害した正恩氏であるはずだ。

それとも激ヤセの原因は、ウサギ肉を食べてダイエットしたせいなのか?

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