「4代目ミスタータイガース」結婚報道の裏で起きた悲劇…甘い蜜に群がるタニマチの闇【記者失格シリーズ】

AIで生成したイメージ
長いスポーツ紙記者生活の中で、思い出したくない出来事が幾つかある。その1つが4代目ミスタータイガース・掛布雅之(71)の結婚情報を追う中で起きた。

最初の情報を掴んだのは結婚1年前のこと。この年のキャンプインが間近になったある夜、私は阪神の中村勝広と大阪・北新地のクラブで飲んでいた。その席で知り合ったのが別の現役選手と飲みに来ていたKという男だった。聞けば、プロ野球関係者に知人が多く、巨人のスター選手が遠征で関西に来ると、いつも飲食を共にしているらしい。いわゆるタニマチだが、そのKがこんな話を口にしたのだ。

「吉見くん、実は僕、掛布の婚約者のSの親父と友人なんだ。うん、掛布は婚約しているよ」

私はすぐに食いついた。当時の掛布は阪神の若き主砲として売り出し中で、人気は全国区となり始めていた。その掛布の結婚となれば間違いなくスクープだ。私はその場で次に会う約束を取り付けると、後日、Kを北新地の高級ふぐ店に招待した。

「式場が決まったら、ぜひ教えてください。私はこれからキャンプ取材に行きますが、帰ったらまた会ってください!」

Kは私の頼みを快諾してくれた。この時点で掛布の結婚情報はどこにも流れていなかった。身内以外は誰も知らないはずで、それならば結婚式場が決まってから確実に裏を取って記事にすればいい。そんな余裕すらあった。

「20万円超の無断ツケ」と一瞬で水泡に帰したスクープ

それから1カ月後。キャンプ取材を終えて帰阪した私を意外なものが待っていた。会社(大阪スポニチ)に行くと、例のふぐ店やスナックなどから私宛の請求書が複数枚届いていたのだ。総額20万円超。当時の大卒初任給が約10万円だから、現在なら数倍の金額に相当する。

店に連絡を入れ確認すると、キャンプ取材に行っている間、Kが知人らを連れて勝手に私のツケで飲み食いしていたらしい。そういえば、Kに大阪スポニチの私の名刺を渡していたことを思い出した。

ただ、それでも怒りや不信感はなかった。これで天下の掛布雅之の結婚スクープが取れるのなら安いものだと思っていたからだ。

その後もKとは定期的に会い、そのたびに食事や酒でもてなした。当時、スポーツ紙はプロ野球報道が花形で、私のような記者でも取材費をそれなりに使うことができた。

そして、事態は急転する。何の動きもなく’79年のシーズンが終わった11月中旬、突然、阪神が球団リリースとして掛布の婚約を発表したのだ。翌日のスポーツ紙が一斉に報じ、私の仕込んだスクープは1日で水泡に帰してしまった。

これには参った。Kから情報を取るため、かなりの取材費をつぎ込んだ。スクープできていれば取材費は落とせたが、これでは会社に請求できない。私は途方に暮れてしまった。幸い、当時の担当部長の温情もあって、なんとか飲食代は経費で落としてもらえた。

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