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蝶野正洋『黒の履歴書』~昭和世代が学ぶべきメンタルヘルスの知識

蝶野正洋『黒の履歴書』~昭和世代が学ぶべきメンタルヘルスの知識
蝶野正洋『黒の履歴書』 (C)週刊実話Web 

女優の深田恭子さんが「適応障害」でしばらく休業することを発表した。適応障害とは、仕事などのストレスが原因で心身や行動に症状が表れ、日々の生活が困難になる状態のことを指す。

深田さんは、10代でデビューしてからずっと第一線で活躍してきたため、常に気を張り詰めていたんだと思う。ここは何も気にせずにゆっくり休んでほしいね。

プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手も、以前からうつ病の症状があったことを公表して、全仏オープンを棄権した。

こうしたメンタルの不調をちゃんと公表して、休業することが増えたのは、いい風潮だと思う。

以前だったら病名を明かさずに、単に「体調不良」とか「充電期間」とボヤかして、表舞台から姿を消していたことが多かったからね。誰もが精神的に病んでしまう可能性はあるんだから、そこを隠さないで堂々と休むのは当たり前。ようやく時代が変わってきたような気がするな。

あとは受け止める側の意識も変えていかないといけない。メンタルの調子を崩した人に対して、どう接すればいいのか戸惑ってしまう人も多い。

応援するつもりで「頑張って」と言うのも、よくないみたいだからな。休業から戻って復帰したときに、周囲がどのように受け入れていくかについても、ちゃんと学べる機会があるといいと思う。

積極的に休むぐらいが昭和世代にはちょうどいい

特に俺らみたいな50~60代の昭和世代は根性論で育ち、気合いでなんとかなると教え込まれて実際にそうやってきた。「調子が悪いから学校を休む」と訴えても、「それくらいなら行けば治る」とかケツを叩かれて、有無を言わさず学校に行かされたりね(笑)。どんな体調不良があっても、病院にいかなきゃ病気にならないっていう理屈だったし、メンタルの不調なんかまったく考えられていなかった。今思えば、とんでもない時代だな。だから、そういうメンタルヘルス(心の健康)に対してのリテラシーもないんだよ。

昭和のプロレス界はスパルタ式の根性論がはびこっていたジャンルだと思うけど、それでも令和の今はすっかり変わっている。新弟子に対して鉄拳制裁なんてもってのほかだし、上から教えるというよりも、選手それぞれが自主的にトレーニングすることが求められている。

今は新人レスラーがケガや体調不良で試合を休みたいと言えば、会社としては休ませるのが当然だ。俺らの頃は骨折してでも出ろと言われて…と、こういう昔の話ばかりしているのはよくないな。

まぁ、今は昭和世代もまだ現役だし、新しい世代もどんどん社会進出している。いわば過渡期だから、ここらで折り合いをつけて、変わっていくのがいいんじゃないか。

ただ、根性論で育ってきたけど若い世代のやり方も認めていかざるを得ないという、いわば板挟みになっている昭和世代は、一番ストレスがかかって、メンタルもやられているのかもしれない。それでも「休みます」と言い出しにくいのがこの世代なんだよ。

そういう考えを一日でも早く捨てて、むしろ積極的に休むぐらいが、昭和世代にはちょうどいいのかもしれないな。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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