「100年後にパチンコの歴史を調べる誰かのために」3300軒を巡った栄華が記録を残し続ける理由【死ぬ前にやっておくべきこと】

パチンコ周辺文化著述家・栄華(C)週刊実話Web

村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前にやっておくべきこと」。全国の寂びれたホールを訪ね歩くパチンコ周辺文化著述家・栄華をインタビュー(後編)。レトロホールに対する熱い思いをたっぷり語っていただいた。

出玉よりも心を奪われた「廃れた建物と古びた看板」

勝つことを手放した栄華は、やがてパチンコの別の顔を覗き見ることになる。

2004年にパチンコ専門誌の世界へ足を踏み入れたが、栄華の仕事は、華やかなライター稼業とはほど遠いデータマン。来る日も来る日もホールに通い、河原で石を積むように台と向き合い数字を刻む。

「仕事はデータ採りばかりで、到底ライターだなんて名乗れない。私はパチンコメーカーの多い名古屋住みで、直営ホールに行く交通費がかからないので、編集部には好都合だったんでしょう。データ取りは8年もやりました。その間にレビューやパチンコ小説の連載も書かせてもらいましたが、攻略誌の中では浮いた存在で長くは続かない。そんな焦りに苛まれる日々の中で、出玉とはまったく別のものが、心のひだに絡みついてくるようになったんです。廃れた建物。古びた看板。前時代的なホールのデザイン…そんな本筋とは関係のない、打ち捨てられた遺物たち。そんなものに心を奪われてしまうんです」

’05年、栄華は個人サイトを開設する。その名は『釘迷宮』。かつてテレビ局でドキュメントを撮っていた時とはわけが違う。誰に頼まれるでもなく、自ら迷い込んだ迷宮の中へと同行2人。ホールの弘法大師は、パチンコ必勝ガイドで「廃業ホール道楽。」の不定期連載を始めたこともあり、やがて「廃墟の人」という称号を授かることになる。

「やっぱりインパクトがあるんでしょうね。でも、挨拶しても『ああ、廃墟の』と言われることに、どんどん違和感を持つようになってきた。私がやりたいことは廃墟じゃないよ。私が記録したいものは、今まさに生きて営業している、建物の外側だけじゃなく、中にある機械や貼り紙、ホールにまつわるすべて。そんなことを何年もかけて修正していきました。最近ですよ。やっと廃墟の人と言われなくなったのは」

考現学。路上観察。生活史。彼女のまなざしは、消えゆく現代の風俗を、まるごと標本にしようとしていた。来る日も、また来る日も。栄華は見ず知らずの町に降り立ち、ホールの暖簾をくぐっては、誰も見向きもしない風景を写真に収め、言葉にしていった。

「不思議なもので、同じ店なんて二つとないんですよ。その土地の、その時代の、店主の人柄まで、ぜんぶ滲み出ている。だから、一軒だって、飽きることがないんです」

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