たけしを一睡もさせなかった夜、息子を球場に忘れた男 長嶋茂雄“伝説の天然語録”【後編】

■第6章 「記録より記憶」この言葉を長嶋本人は言っていない

「記録よりも記憶に残る選手」――長嶋茂雄を語る際に必ずといっていいほど引用されるこのフレーズ。しかし、実際には長嶋本人がこう語ったという確認可能なニュースソースは存在しない。メディアも「誰が言ったのか分からない」と指摘しており、長嶋茂雄を語りたい人々が後世に作り上げたキャッチコピーである可能性が高い。

むしろ長嶋は記録の人でもあった。首位打者6回(セ・リーグ最多)、最多安打10回、打点王5回、MVP5回、本塁打王2回、通算2471安打・444本塁打・1522打点――。「記録よりも記憶」という言葉が一人歩きした結果、長嶋の実績が過小評価されてきた面さえある。

確実に長嶋が発した言葉として記録されているものに、日刊スポーツの語録がある。

デビュー戦で4打席連続三振を喫した際の「ごらんの通りのありさまですよ。今日は全然ダメでした」という正直な一言。「プロなら陰の苦労や苦悩を人前で見せるべきでない」という自戒の言葉。「長嶋茂雄であり続けることは結構苦労するんだよ」という本音。派手なキャラクターの裏に、実直で自意識の強い職業人の顔があったことを示している。

■ミスターの言葉が愛される理由

デビュー戦の「ごらんのありさまですよ」から始まり、引退の「わが巨人軍は永久に不滅です」まで。その間にばら撒かれた無数の迷言・天然エピソードは、「悪意のなさ」という点において完璧だった。誰かを傷つけず、どんな状況でも周囲を笑顔にし、そしてどこか温かかった。

2025年6月3日、背番号「3」と同じ日に逝ったミスターは、今もなお「ミスターイングリッシュ」として、「魚へんにブルー」として、「たけちゃん、誰とゴルフですか?」として——日本中のファンの笑顔の中に生き続けている。

その意味でも「長嶋茂雄は永久に不滅」なのだ。

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