たけしを一睡もさせなかった夜、息子を球場に忘れた男 長嶋茂雄“伝説の天然語録”【後編】

■第5章 「忘れた」息子・一茂を球場に置き去りに

長嶋の「天然」が最も象徴的に表れるエピソードのひとつが、長男・一茂の「置き去り事件」だ。

野村克也の著書(幻冬舎)にも記されているこのエピソードによれば、長嶋は試合観戦のために一茂を球場へ連れて行き、試合に熱中するあまり試合終了後に息子の存在を完全に忘れて帰宅。妻に「一茂は?」と問いかけられて初めて気づき、慌てて引き返した。

一茂自身も後年に「それが1度や2度ではなかった」とテレビで証言している。

また、靴下の「大捜索」も傑作だ。ロッカールームで「靴下がない!」と突然騒ぎ出した長嶋に、チームメイト全員がロッカー中を探し回る。しかし、靴下はどこにも見つからない――最終的に、長嶋が片方の足に2枚重ねて履いていたことが発覚したという伝説の一コマだ。

「中曽根康弘が長嶋邸を借りた」という話も知る人ぞ知るエピソードだ。

政界では「世田谷に住むと出世する」という験担ぎがあり、中曽根康弘が長嶋所有の世田谷区上北沢の家を借りて居住していたこともあると記録されている。長嶋という人間の引力は、政界にまで及んでいたのだ。

座右の銘は飛田穂洲の「一球入魂、快打洗心」から拝借した「快打洗心」で、現役時代のサインに添えていた。「長嶋茂雄であり続けることは結構苦労するんだよ」――この言葉が、すべての天然エピソードの裏にある本音だったのかもしれない。