長嶋茂雄の伝説語録を一挙公開 『魚へんにブルー』『I live in EDO』笑い泣き必至の名迷言集【前編】

■第3章 野村克也が束になっても崩せなかった「完全無敵の集中力」

球界一の頭脳・野村克也のキャッチャーとしての代名詞が「ささやき戦術」だった。

銀座の高級クラブに出向いて打者のお気に入りの女性の名前を調べ上げ、バッターボックスで「最近、あの子と仲良いらしいね」とボソッとつぶやく。多くの打者が動揺し、集中力を乱してアウトになっていった。

しかし、長嶋茂雄にはまったく通用しなかった。野村はその著書『野村の極意 人生を豊かにする259の言葉』の中でこう記している。

「王は私のささやき戦術をちゃんと聞いて、会話もしてくれるが、すぐに集中力を高めて打席に挑んだ。長嶋は何をささやいても見当違いの反応が返ってくる。さっぱり心が読めなかった」と。

具体的なやり取りも幻冬舎の書籍などに残されている。野村が「最近銀座行ってる?」とささやくと、長嶋は「ノムさん、このピッチャーどう?」と全く関係ない返答をしてくる。

こちらがいくら話しかけても、長嶋の意識はすでに投手の攻略法に向いており、野村の言葉は完全に素通りしてしまうのだ。

「ささやきにささやきで返す男」――野村はそう評した。長嶋に球種をわざと教えるフリをして「スライダーを投げる」とささやき、実際にはストレートを投げさせるという二重の罠を仕掛けたこともある。

しかし長嶋はそのスライダー(実際にはストレート)を見事にホームランにしてしまった。呆然とする野村に、長嶋は「ノムさん、本当にスライダーを投げちゃダメじゃないか!」と笑顔で言い放ったという。野村はのちに「つくづく嫌になっちゃうよなぁ」とぼやいている。

なお野村本人は著書で王貞治にもさやき戦術は通用しなかったとも記しており、「長嶋だけに通用しなかった」という表現は正確ではなく、「特に長嶋の反応が際立って独特だった」という点が正確な理解である。

【長嶋茂雄迷言集・後編】へ続く

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