「予備校の入学式帰りに初めてパチンコ屋へ」レトロホール愛好家・栄華が語る“業の深い青春”【死ぬ前にやっておくべきこと】

予備校時代に初めて1人で打ったパチンコ台「三洋 スタジアム」

生活費を溶かし、攻略法を買い漁った日々

あと一歩踏み込めば、ドロ沼にハマって抜け出せなくなる。栄華はいつも、その寸前で回避していた。よっぽどいい守護霊でもいるのか。「まっとうに生きてほしい」と願う母の思いが道を違わせないのか。

卒業後、ケーブルテレビ局に就職し、ローカルニュースのディレクターとして働いた。全国放送では取るに足らないような市井の景色や暮らし、文化などを追い掛け、捨て犬を追い掛けたドキュメンタリーで賞も獲った。誰も見ないものに視点を作る。その目は後にホールへと向けられる複線なのかはさておき、栄華は局を辞めてしまう。

次に彼女が心を寄せたのは、老年期の障害。国家資格である作業療法士の資格を取るべく専門学校へ通うと、そこで生涯の伴侶と出会う。学費をパチンコに溶かしたこともある、業の深い男であった。

「結婚してから、夫と久しぶりに羽根モノを打ちに行ったんです。『ギャンブル性の高い台はやめておこうね』とか約束して。かわいいものですよね。でも、これでまた私の魂に火が点いちゃうんです。デジパチの方へ手を出して、使っちゃいけない生活費を突っ込んで、夫には内緒にする。それで興味を持ち始めるんです。どうすれば勝てるの。世の中にパチプロって本当にいるのかなって。そこから必勝法の探求が始まります。何万円もする攻略法を、次から次へと買ってね。それらは全部オカルトでした。一回も当たりゃしないんですが、今度こそ本物だとまた別の攻略法を買ってしまう。ああ、ウソばっかりだ。パチンコに攻略法なんてない。パチプロなんて存在しないんだと思いました」

真実はそんな達観と共に、たまたま観てしまったCS放送パチンコ・パチスロTVにあった。今のパチンコ打ちなら誰でも知っている「ボーダー理論」。それを知った彼女は、ついに勝てるパチンコを知ってしまう。

「それは一生なくならない宝箱を手にしたようなもの。嬉しくて毎日ホールに通いました。勝てることが分かると、今度はそれを人に教えたくなる。そこからデータを取って東京の編集部に送るパチンコライターの仕事が始まります。8年ぐらい続けたのかな。でもね、勝てると分かって打つパチンコは、つまらないんです。答えの出てる問題を、延々と解いているみたいで」

それは小学校3年生の時に体験した脳内が幸福で満たされる博打とは対極にある、数学であり、忍耐であり、労働だった。

出玉への興味を失う代わりに湧き上がってきた渇望と、それまでの過去が融合した時。栄華の前に、勝ち負けでは測れない新たな地平が開かれた。
 (後編へ続く)

「週刊実話」7月2・9日号より