「予備校の入学式帰りに初めてパチンコ屋へ」レトロホール愛好家・栄華が語る“業の深い青春”【死ぬ前にやっておくべきこと】

パチンコ周辺文化著述家・栄華(C)週刊実話Web

村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前にやっておくべきこと」。全国の寂びれたホールを訪ね歩くパチンコ周辺文化著述家・栄華をインタビュー(中編)。レトロホールに対する熱い思いをたっぷり語っていただいた。

「何者かになりたい」少女を突き動かしたサブカル熱

物語は、栄華が多感な時期を過ごした京都から始まる。

幼い頃から本ばかり読む、もの静かな文学少女だった。小学2年生で小説を書き始め、宮沢賢治を読み耽り、空想にばかり耽る。そのおとなしげな内面には、いつも別の炎がくすぶっていた。

「文学少女ではあったのですが、根はサブカル寄りなんでしょうね。中学・高校生ぐらいで『宝島』を読みだして、バンドの追っかけなどにも精を出すようになりと…だんだんとそっちの方へと流れてゆくんです。ぼんやりとした、何者でもないが故の、何者かに憧れる気持ち。文学・音楽・演劇など、あらゆるものに触れて、何かになろうと。真っ当な優等生ではなかったということです」

中学3年まで「月の小遣い500円の刑」を乗り越え、若者らしくサブカルチャーへと傾倒していく彼女の業は収まりを見せているかのように思えた。

しかし、大学受験に失敗。予備校生となったその日に、欲望は解禁された。

「予備校の入学式の帰りに、パチンコ屋に直行しました。予備校生といえばパチンコです。憧れていた予備校生となったその日に、ずっと憧れていたパチンコを初めて打ちました。『スタジアム』という羽根モノ。面白かった。あっという間にのめり込みましたね」

栄華のギャンブラーとしての血が目覚めたかに思えた。しかし、興奮の中にあっても人生をフルベットするでなく、本分である勉強も両立させ、翌年には第一志望の京都女子大に合格するのはたいしたもの。しかもそこは、「お嫁さんにしたい女子大」の常連という、お嬢様学校である。

その清楚な学び舎に籍を置きながら、彼女が夜ごと向かった先は、京大西部講堂を根城とするアングラ劇団の、薄暗い稽古場だった。“お嫁さんにしたい”が裸足で逃げ出す、ギャンブル&前衛演劇の沼地に自ら足を入れた。

「当時の私は、自分で言うのもなんですが、真っさら感がすごくて、初めて稽古場を訪ねた時は、三つ編みにお母さんが作ってくれた白いワンピースを着ていて『とんでもない世間知らずが来たぞ!』と驚愕されたと聞きます。でも私にとって真っさら感はコンプレックスだったんですね。劇団の人たちはこれまで会ったこともない酸いも甘いも嚙み分けた大人たちに見えました。それに比べて私は何も知らない。皮肉を言われても分からない。バカだバカだと言われて、部屋の隅でメソメソと泣いているような…ね。それでも主役を演じたり、それなりに充実した活動だったんです。2年ほど活動したところで劇団は解散。私は就職して、演劇の世界には戻りませんでした。なんでだろう。やっぱりみんな、アル中だったり、お金がなくて苦労しているのを見ていたから、『本当にこの中に入っていいのだろうか』と、踏み留まったのかもしれませんね」

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