大谷翔平のフォーム変更…「肘を守る投げ方」をめぐる米最新研究と二刀流の全身連動

AIで生成したイメージ


大谷翔平のフォームが変わっている。

ドジャース移籍後、以前よりもウィンドアップを取り入れた投球フォーム。

変化したテンポ。そして一部では「アームスロットが少し低く見える」とも指摘されている。

もちろん、フォーム変更の理由を本人以外が断定することはできない。

だが近年のMLBでは今、「どう投げれば肘を壊しにくいのか」をめぐる研究が急速に進んでいる。

そのテーマは、大谷の変化と重なって見える部分がある。

科学が明かしたトミー・ジョン手術のリスク


投球時、肘には非常に大きな負荷がかかる。

特に問題視されているのが肘への外反ストレスだ。

投球時に前腕が外側へ開こうとし、肘の内側が強く引っ張られる力である。

その負荷を主に支えているのがUCL(内側側副靱帯)で、いわゆる「トミー・ジョン手術」はこの靱帯を再建する手術として知られている。

2025年、米国スポーツ医学研究機関(ASMI)のグレン・フライジッグ博士らは、305人のプロ投手を追跡した前向きコホート研究を『Orthopaedic Journal of Sports Medicine』誌に発表した。

後にUCL手術を受けた投手群では、平均肘外反トルク(回転させようとする力の強さ)が有意に高かった。

「肘トルクが10 N·m増加するごとにUCL手術リスクが26%上昇した」というのが結論だ。

一方で興味深いのは、「球速そのもの」と手術リスクには、この研究では統計的に有意な関連が確認されなかった点だ。

つまり現在の研究は、「どれだけ速いか」より「どういう力学で投げているか」を重視し始めている――とも読める。

ただし球速とUCL損傷の関連を示す先行研究も複数あり、これをもって「球速は無関係」と結論づけることはできない。

投げ方の「型」が手術率を変えるのか


では投球スタイルによって実際に差は出るのか。

メイソン・ボードリーらの研究チームが2022年、同誌に発表した論文はこの問いを正面として扱った。

2007年から2017年の10年間にUCL再建手術を受けたMLB投手223人を分析し、投球スタイルを2種類に分類した。

「タル・アンド・フォール(TF)」体を高く保ったまま前方に倒れ込む投げ方――と、「ドロップ・アンド・ドライブ(DD)」体を低く沈め、軸足で地面を前方へ押し出しながら推進する投げ方だ。

結果、UCL手術を受けた投手の72.6%がTFスタイルだった。

翌2023年の続報では、2019年シーズンのMLB全投人を対象にTFスタイルの方が上肢(肩・肘)の故障率が高い傾向も確認されている。

ただし研究者たちは慎重だ。

「TFとDDの比較はまだ横断研究が主で、因果関係を断定するにはさらなる縦断研究が必要」という留報は各論文に共通して記されている。

「72.6%がTFだった」という事実と「TFだから壊れた」という因果は別の話だ、という姿勢だ。

MLB全体でもTFスタイルが多数派である可能性があり、「TFだから故障する」と単純化することはできない。

さらに大学投手121人を対象にした別の研究では、「前足の膝の曲がり角度が10度増えるごとに、肘への外反力が統計的に有意に低下する」という結果が出ている。

体を低く使って前足の膝を曲げるほど肘への負荷が小さくなる、という定量的なエビデンスだ。

ただし同研究は同時に、膝屈曲角度が10度増えると球速が約0.2 m/s低下することも示している。

肘への負荷軽減と球速にはトレードオフが生じる可能性があり、単純に「膝を曲げれば良い」とは言い切れない。

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