イランは攻撃、北朝鮮は手出しできない 米国を縛る「3つの重大リスク」の正体

中朝条約と核がイランとの決定的な違い

次に北朝鮮は核兵器を保有しているだけでなく、「中国とロシアが北朝鮮を支援している」という事実が、孤立するイランとは異なっている。

5月9日、モスクワの赤の広場で行われたロシアの対独戦勝記念式に、北朝鮮の「陸海空軍混成中隊」が初参加するほど両国の軍事同盟は深化しているのだ。

「さらに、重要なのが中国の存在です。両国は一方が攻撃を受けたら他方が軍事介入するという内容を持つ『中朝友好協力相互援助条約』を締結しています。中国は北朝鮮の核開発を歓迎しているわけではありませんが、独裁体制崩壊や朝鮮半島での大規模な戦争も望んでいない。その結果、北朝鮮の安定を重視し、金正恩体制の維持につながる資源供給など、さまざまな支援を続けているのです」(北朝鮮ウオッチャー)

ソウル2000万人が砲撃の射程内にある

米国にとって、北朝鮮は「地政学的」にみても、そのリスクはイランよりはるかに高い。仮に、米国が北朝鮮に軍事攻撃を開始した場合、最初に甚大な被害を受ける可能性があるのは、米国本土ではなく、同盟国の韓国と日本である。

「1994年に当時のビル・クリントン米大統領が北朝鮮の核施設に対する戦略的攻撃を検討した際、報復攻撃を恐れた当時の韓国の金泳三大統領が反対しています。韓国の首都ソウルは南北軍事境界線から約40~50キロ圏に位置し、首都圏には全人口の半数近くに相当する約2000万人が住んでいます。北朝鮮は南北国境に長距離砲や多連装ロケットを多数配備しており、開戦と同時に首都圏へ砲撃を行う能力は、核を使用しない場合でも現実的な脅威となっているのです」(国際ジャーナリスト)

また日本も弾道ミサイルの射程内にある。北朝鮮は、韓国や日本への報復の可能性を通じて、米国の軍事行動を抑止する構図を作っている。米国が攻撃を選択すれば、その代償は直ちに韓国や日本に及ぶのだ。

「現代戦で最も重要な概念がこの『抑止力』です。これは北朝鮮に報復能力があると米国に認識させることで、攻撃を思い止まらせる戦略です。『一部の残存勢力が反撃してくるかもしれない』という不確実性が残るだけで、米軍の攻撃のハードルは飛躍的に高まり、これが地下施設の反撃能力と相まって北朝鮮への攻撃に踏み切れない抑止力になっている」(軍事アナリスト)