派閥解散から“キングメーカー”へ…岸田文雄の秘めたしたたかさ【歴代総理とっておきの話】

不祥事により保守本流の“名門”派閥が解散

しかし、いかんせん政治の世界は、あっという間に舞台が変わるようにできている。政権の足元をすくうような大波が、次々と押し寄せてきたのである。

マイナンバーカードをめぐる不祥事の続出、連立を組む公明党との関係悪化、先の読めない物価高騰など、いずれも岸田政権は国民を納得させる明確な対応策を持てないでいた。そして、その最たるものは、当時の安倍派を中心とした裏金事件の発覚であった。

尽きることのない「政治とカネ」の不祥事によって、ついに岸田自身も諸悪の根源は派閥にありと、自らの宏池会解散を余儀なくされた。結果、麻生派を除く各派も、これに倣って解散したが、先に触れたように再び旧派閥単位のグループ化に向け、動きが加速しているようである。

岸田に近い中堅議員は、こう言っていた。

「岸田氏が首相になったとき、2つのジンクスを覆せるかが話題になった。宏池会出身の大平、鈴木、宮澤の3氏は、いずれも長期政権を果たせず、また、岸田氏は公邸住まいだったが、これにも短命のジンクスがあった。

結局、岸田政権は3年間をまっとうした。どうやらジンクスをクリアしてみせた格好だ。そのために、今日なお“余力あり”で、キングメーカーに色気たっぷりということではないか」

秘めた“したたかさ”が、岸田の身上のようである。

(本文中敬称略/次回は石破茂)

「週刊実話」5月21日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。