五木ひろし『千曲川』が示す“最優秀歌唱賞の本質”と1975年の音楽観【スージー鈴木の週刊歌謡実話第32回】



演歌に分類されて損をしてきた名曲

さて、私も還暦間近となりましたが、未だに演歌が苦手です。

演歌と歌謡曲、Jポップは地続きで、それぞれの間に境目などないと信じています。でも、その境目に壁を作るように、演歌ファンだけに向けた「これぞ演歌」という感じの曲ばかりの閉じたジャンル=演歌は嫌い、というか苦手。

でも、そう考えると「はて、『千曲川』は演歌なのか?」と悩んでしまいます。

確かに日本の風景を歌っている点は演歌的ですが、酒や涙、ドロドロした別れ話が一切出てこない、さらっとした歌詞は、むしろ演歌的ではないと言える。

また「信濃」「浅間山」「千曲川」と、信濃路の巨大なスケール感を描く歌詞は、チマチマした演歌的歌詞世界の対極ではないか。

だから、五木ひろしだからと演歌に分類されることで『千曲川』は損をしてきたような気がするのです。

もうちょっとポップス寄り、スタンダード寄りというか、例えば小林旭『熱き心に』(ʼ85年)と同じような位置に置いてあげたいなと思います。僭越ながら。

さて、新刊『日本の新しい音楽1975~』では、今さらながらにこの年=ʼ75年のレコード大賞を私が勝手に決めています。

最優秀歌唱賞はこの曲。最優秀新人賞は岩崎宏美『ロマンス』。ではスージー鈴木が勝手に選ぶ、今さらながらのʼ75年レコード大賞は? 答えは――新刊をチェックしてください!

「週刊実話」5月7・14日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。