派閥解体の張本人が狙う“キングメーカー”の座…岸田文雄の静かなる野望【歴代総理とっておきの話】



“キングメーカー構想”を揺るがす林総務相との確執

しかし、かく絶好調と思われる岸田だが、政治の世界は常に難題が伴走するものである。岸田の場合は、ここに来て林総務相との結束が乱れ始めているとされ、そうなればキングメーカーの座を目指す岸田の勢いが、半減することは言うまでもない。

これには旧岸田派時代の中堅議員から、次のような声がある。

「盤石の関係を誇った岸田、林の両氏だったが、前回の高市氏が最終的に勝ち上がった自民党総裁選を機に、すきま風が吹き出した。

あのときは林氏も善戦したが、岸田氏に近い議員の一部が小泉進次郎氏(現・防衛相)を支援、岸田氏自身も小泉氏の支持に回った。これに林氏が失望、以後、岸田氏と歩調が合わなくなった。林氏は『旧岸田派という派閥がなくなったのだから、集まりは自由だ』とし、総裁選で自らを支持した旧岸田派議員との交流に精を出している。

仮に“ポスト高市”で林氏が勝ち上がった場合、岸田氏が目論むキングメーカーの地位は、水泡に帰す可能性が高い。また、岸田、林両氏が結束を取り戻せるか否かは、“ポスト高市”そのものの行方を左右することになるだろう」

この岸田は、祖父、父と続く衆院議員の「世襲」である。座右の銘は「春風接人」で、なるほど性格は温厚だが、「執念深さも秘めている」(前出・旧岸田派中堅議員)との意見もある。また、読書家で首相に就任する前は、帰宅前に書店に立ち寄ることも多かった。勉強家でもあったようだ。

一方で、自他ともに認める酒豪として知られ、外相時代にロシアのラブロフ外相とウォッカの飲み比べをして、一歩も引くことがなかったという“力強い”エピソードを持っている。

(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」5月7・14日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。