映画『月の犬』で陰をまとった“妖艶な美女”を好演! 女優・黒谷友香が切り開いた新境地

黒谷友香(C)週刊実話Web


絶望を超越する沙織の凄み

――そうやって完成された沙織というキャラクターを黒谷さんは見事に演じられていました。沙織は、萩原聖人さんが演じる元ヤクザの東島龍と、深水元基さんが演じる現役ヤクザの南辰也、その2人を引き合わせる作品のキーマンです。
黒谷 2人の男が沙織によって引き合わせられたことで運命が激しく変わっていき、それぞれの生き方に対して決着をつけようとするんです。沙織は沙織で、手を染めた裏稼業に彼女なりのケジメをつけようとします。インタビューでは話せませんが、沙織がそういう考えを持って行動する女性である、ということを物語の序盤から表現していくことを監督に求められた気がします。

――ちなみに、黒谷さんの中に“沙織的な要素”って少しでもありますか?
黒谷 えぇ? ないんじゃないですか。私の中に沙織の要素があったら大変です(笑)。

――いえ、犯罪者的なことではなく、いわゆる現場や人を仕切れたりするような一面ですとか。
黒谷 どうでしょうね。でも、東島や南のどっちに従うわけでもなく、対等な関係でいられる沙織はすごく強い人だなって思います。

――共演した萩原さん、深水さんはいかがでしたか。
黒谷 深水さんは20代でご一緒して以来なので、二十数年ぶりです。『すごく時が経って、また今回の役で共演できるのはうれしいね』って、撮影の合間に話しました。萩原さんは数年前にもご一緒したんですけど、また違う作品で再会して関われるのは、この仕事を続けていて良かったなって思います。ちなみに萩原さんとロケ現場でお会いしたときは、本当に東島そのものでした。

――役に入り込んでいらっしゃったんですね。萩原さんの演技には絶望感と虚無感、凄みを感じました。
黒谷 試写を見たときに、東島の部屋のシーンなど、すごく印象的でした。ネタバレになるので言えないシーンも、本当に見応えがありました。

――東島も南も饒舌ではなく淡々とさえしているんですけど、言葉にはならない腹の中にある思いや決意を、お二人は見事に表現されていました。
黒谷 深水さんの公式コメントで『淡々としていながらも、内面には沸々とした思いを抱えている。物語が進むほどにどんどん心がざわついていった』とありますが、本当にそうだなと思います。

――愛する人を亡くし人生に絶望した東島と、上手くいっている状況を打破したい絶望感を持つ南、お二人の演技から本作のテーマでもある「絶望した大人」について考えさせられました。
黒谷 私の演じる沙織は、心のどこかで絶望はしていると思うんですけど、東島や南とは違うんです。2人は絶望を行動に変えるけど、沙織は抗っても現実は何も変わらないと分かっています。絶望すら通り越しちゃってる感じさえします。