【深淵ホラー劇場:映画界が封印した『G級の神々』】#7イタリアン・ホラーは死んだのか? 自国の巨匠を無視するイタリアと、新たな旗手たちの逆襲

イラスト/沙さ綺ゆがみ

なぜ今、イタリアのインディーズ・ホラーが熱いのか。その裏には、かつての巨匠たちへの愛と、現代の配信事情が生んだ奇妙な「擬態」があった。黄金時代の亡霊を追い、イタリアン・ホラーの「現在形」を浮き彫りにする。

■フルチ、バーヴァ、アルジェント! イタリアン・ホラーの黄金時代とは?

残酷、下品でありながら優れた美的感覚を持つイタリアンホラーが量産された

1960〜80年代、『サスペリア』のダリオ・アルジェントや、多くの職人監督による過剰に残酷、下品でありながら優れた美的感覚を持つホラー映画が量産された。イタリア製ホラーの黄金時代である。

だが、やがて資金力のある映画製作会社はジャンル映画の製作に見切りをつけ、後を担うはずの映像作家らの偏見も手伝い、イタリアのホラー映画は衰退してしまった。

その一方でイタリアン・ホラーはイタリア以外の国で再評価が進み、名作から駄作にいたるまで高画質DVDがリリースされ、世界のホラーコンベンションには黄金時代を支えたキャストやスタッフがゲストとして歓声で迎えられた。

日本でも山崎圭司氏らによって、当時は謎だらけだったイタリアン・ホラーへの理解が広まり多くのホラーファンを熱狂させた。『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ―血ぬられたハッタリの美学』(山崎圭司-編)など山崎氏の著書は、日本での評価に決定的な影響を与えたのである。

■実証! 「イタリア人は自国のホラーを観ない」という衝撃の事実

バイロン・リンク監督

イタリア人は自国のホラーを知らないし観ていないという噂が昔からあった。そこで現在イタリアのインディーズ・ホラー界で注目を浴びるバイロン・リンク監督に事実確認をした。

「特に若い世代に顕著ですが、イタリア人は自分たちの作品を大切にせず敬意も払っていません」。バイロンはそう打ち明ける。

ロッセリーニ、フェリーニといったイタリアの巨匠の映画ですら国内では退屈な映画という扱いだという。

ホラー映画も同様で、フルチ、バーヴァ、アルジェントといった巨匠に対してのイタリア国内と国外の評価には驚くほどの温度差があるのは間違いない。

逆にバイロンが好きなJホラーについても聞いてみた。彼は清水崇監督の『呪怨』と小林正樹監督の『怪談』がお気に入りだと言う。

また、イタリアのZ世代は黒沢清監督の作品、そして三池崇史監督の過激な作品を好んで見るらしい。ホラー映画における世代間のギャップは実に興味深い。

【関連】【深淵ホラー劇場:映画界が封印した『G級の神々』】#6 後編:Jホラーに救われた異端児。血塗られたメイクの下に隠された「日本への愛」