【深淵ホラー劇場:映画界が封印した『G級の神々』】#7イタリアン・ホラーは死んだのか? 自国の巨匠を無視するイタリアと、新たな旗手たちの逆襲

■ベルトを持った殺人鬼が襲う! 注目の新作『Cinghia』とレジェンドの復帰

注目の新作『Cinghia』

バイロン・リンクの新作長編映画『Cinghia(ベルト)』は70〜80年代イタリアン・ホラーの様式美を、コロナ禍という特定された時代で展開させる異色作だ。パンデミックの不安がイタリアを覆う中、ベルトを凶器に使う殺人鬼が出没し連続殺人を繰り返す。

本作の製作には4年が費やされ、実際のパンデミック時に撮影された映像からは、ドキュメンタリーのような当時のイタリアの空気が伝わってくる。

また、イタリアン・ホラーのレジェンドであるシルヴィア・コラティーナ(『墓地裏の家』、『マーダロック』)が本作で本格的な映画復帰を果たしたことも大きな話題だ。

ちなみにバイロンによると、イーライ・ロス監督の携帯電話の壁紙は『墓地裏の家』出演時のシルヴィアだったそうだ。

■ホラー映画は予言する! バイロン・リンクのホラー哲学

短編映画『オリヴィア』

バイロンの前作『オリヴィア』は森林伐採という社会問題を扱った作品だ。『ゼイリブ』、『ゲット・アウト』などの名作が持つ問題提起を重要視するバイロンはこう語る。

「イタリアでは“コメディこそが社会を語る”という格言がよく使われます。それはある程度真実ですが、今ではなく昔のコメディに当てはまることです。コメディはその瞬間を捉え、ホラーは予言するのです」

バイロンを中心とするオーレ・フィルムは『Fantasmagoria(幻想)』というウェブTVシリーズも手がける。都市伝説と昔話の境界線上にある物語を考察する本シリーズは、多くの映像祭で受賞するという栄誉を勝ち取った。

ホラー映画は映画製作において最高の実験場だと語るバイロンは、今後さらなる長編も手掛けるかもしれないとのことだ。

■擬態するイタリア映画!Amazonプライムに潜む「現在形」

ウェブに広がるイタリアン・ホラー

ところで、Amazonプライム・ビデオを始めとした配信サイトには謎めいたホラー映画が何本かある。英語音声のためアメリカ映画に見えるが、それらは実はイタリア映画なのだ。 

例えば、『サバイバル・デスゲーム』(2017)や『ブラッディ・バースデー』(2020)のエロス・ダントナ監督はアメリカからの出資を受け、イタリアで撮影をしている。

思えば、かつてのイタリアン・ホラーも同じように英語の吹き替えを使ってアメリカ映画に擬態していた。そのアクの強さゆえにアメリカ映画に見えなかったのが、逆に魅力だったのである。

現在、従来のテレビ階級制度が一掃され、何かが動き始めている。バイロンは語る。

「私たちは新たなステージへと足を踏み入れています」

技術の進歩によって、イタリアの小規模インディーズ製作者も、世界市場という巨大なプラットフォームでの競争に加わることが容易になった事実は見逃せない。