18歳の少女が“伝説の一夜”を動かした――奇跡のジャズ公演誕生の舞台裏を描いた映画『1975年のケルン・コンサート』【やくみつるのシネマ 小言主義 第296回】

© Wolfgang Ennenbach / One Two Films

【やくみつるのシネマ 小言主義 第296回】『1975年のケルン・コンサート』
ドイツ・ケルンに住む音楽好きの高校生ヴェラ・ブランデス(マラ・エムデ)は、来独するミュージシャンのツアーをブッキングするアルバイトを始める。持ち前の行動力を発揮して仕事が軌道に乗り始めた頃、ベルリンのジャズ・フェスティバルで、アメリカの天才ピアニスト、キース・ジャレット(ジョン・マガロ)の演奏に衝撃を受ける。キースのケルン公演を実現させようと、幾多の困難を乗り越えてコンサート開催にこぎ着けるが、当日、思いもよらぬトラブルが発生し…。

トラブル続出で直前まで中止寸前

自分は、ジャズには疎いんです。日本のビッグバンドのCDを何枚か持っている程度で、本作のキーマンであるキース・ジャレットというジャズピアニストの名前すら知らないレベルです。

ですが、自分のような初心者の方も、ジャズの歴史が分かる解説的な「遊び」がところどころ挟まっていますのでご安心を。「音楽教養番組」としても見られる楽しみがあります。

さて、本作は1975年に開催された伝説の『ケルン・コンサート』がいかにして誕生したのか、予想外の顛末が明かされます。当日のLIVE演奏を収録したアルバム『ザ・ケルン・コンサート』は、世界で最も売れたジャズ・ソロ・アルバムらしいです。

奇跡とまで言われたコンサートをたった1人で実現させたのが、18歳の女性プロモーター、ヴィラ・ブランデスだったという知られざる実話を基にも描かれています。

経験も知識もないまま突っ走るヴィラは、キースからも劇場からも拒否されっぱなし。トラブルが続出し、直前まで中止寸前です。

その状況をどうやってひっくり返したのか、資金はどのように用意したのか。コンサート当日、なぜ、ポンコツのリハーサル用ピアノしか用意できなかったのか。数々の謎が、疾走感のあふれる映像で明らかになっていく、一種の青春映画です。自分にとっては、“当時のジャズ興行は、こうやってこしらえていくのね”という発見の連続でした。

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