© 2026 映画『90メートル』製作委員会
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進学か介護か…揺れる息子の決断 難病の母と生きる日常を描く『90メートル』のリアル【やくみつるのシネマ 小言主義 第295回】

【やくみつるのシネマ 小言主義 第295回】『90メートル』
母子家庭で育ち、小学生の頃からバスケットボール一筋だった佑(山時聡真)は、高校2年のときに母・美咲(菅野美穂)が難病を患ったことでバスケを辞める。介護ヘルパーの支援を受けながら、美咲のケアや家事をこなす日々を送っていた。高校3年になった佑は、東京の大学に進学したい気持ちはあるものの、美咲を一人にするわけにはいかないと自分の夢や希望を諦めかけていたある日、担任教師から自己推薦による受験を勧められる。しかし、美咲が日に日に身体の自由を失っていく姿を前に、佑は上京したい気持ちを打ち明けられずにいた。

「エンタメ」とは別次元の作品

今、注目の中川駿監督による初のオリジナル企画作品。話題になっていますね。

日に日に身体の自由が利かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)を患うシングルマザーと思春期の息子を追ったドキュメンタリー番組を見たことが発想のきっかけだそうです。

監督自身が30歳のとき、ガンを患った母を看取った経験があり、闘病中の母と息子の関係が他人事とは思えなかったらしい。

ALS患者と介助者たちへの取材を重ね、リアルな感情やエピソードを入れ込んだ本作。難病と向き合う日々は、さらに過酷なのかもしれませんが、大いに考えさせられた一作でした。そういう意味で星3つとしました。

パンフレットによると、「劇映画としての存在意義を追求し、『エンターテインメントとしてのバランス感』にこだわった」そう。自分はこの言葉を読んで、意外な気がしました。「エンタメ」とは別次元の作品ではないかと。

主人公の佑は、高校3年生。母親のケアをしながら、家事すべてをこなす日々が一生続くように思え、部活も、友人関係も、進学も諦めようとします。だが、ある日、24時間ケアの体制が整い、何人ものプロ介護者が代わる代わるサポートしてくれるように。今は、こんなにも手厚いケアが自宅で受けられる制度があることにも驚きました。

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