“どじょう宰相”はなぜ政権を失ったのか──信念と増税に執着した野田佳彦の誤算【歴代総理とっておきの話】

増税が招いた政権瓦解の連鎖

こうしたなか、時に野田の頼みの綱は、消費増税の必要性に関して基本的な立場が一致していた自民党と公明党であった。結局、一体改革の関連法案(増税法案)は平成24(2012)年6月、「民自公」3党の協議を経たうえで衆院を通過させることができた。

しかし、対立する小沢グループからは、こんな厳しい声が出ていたのだった。

「民主党が政権を取らせてもらったのは、政権交代時に『国民の生活が第一』を掲げ、国民と約束したからではなかったのか。それが消費増税での負担増では、もはや政権はもたない。野田は消費増税を『不退転の決意でやる』とまで表明しているが、あの執着ぶりは異常である」

衆院の採決では、小沢グループの議員を中心に57人が反対票を投じ、これを機に衆参の小沢グループ50人が、もはや野田政権には協力できないとして、党を離れることになった。小沢らは離党後、「国民の生活が第一」を結党したが、ここから実質的な民主党政権の瓦解が始まったのである。

前出の官邸詰め記者は、こう続けた。

「野田という政治家は、信念がブレないのが持ち味。しかし、消費増税もTPPも官僚の言うまま、野田を支援するグループにも根回し上手が不在で、結局は民主党政権が標榜した『脱官僚』には遠く及ばなかった。鳩山、菅と同様、野田もまた政略家として、力不足は否めなかった」

しかし、野田は窮余の一策というべきか「どじょう」の一念なのか、増税法案の成立に向けて“爆弾”を投げつけたのだった。

(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」4月2・9日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。