「イラ菅」と呼ばれた激情の宰相…菅直人の気質が招いた政権迷走の始まり

東日本大震災で問われた危機管理能力

こうしたなか、菅は自身の危機管理能力を問われる事件に直面する。沖縄県の尖閣諸島沖で、海上保安庁巡視船と中国漁船が衝突。このとき、中国人船長を逮捕すると、昨今の高市早苗首相の「台湾有事発言」で中国の習近平政権が硬化し、レアアース(希土類)の輸出規制を強めたように、当時の中国政府も同様の輸出規制で、日本政府に圧力をかけてきたのである。

ここで、中国からの抗議を受けた菅政権が、処分保留のままあっさり船長を釈放してしまったことで、またぞろ批判に火がついた。

さらにまずかったのは、後日、海上保安官がインターネット動画サイトに、衝突時の映像を自主的に公開したことで、今度は「なぜ、すぐに映像を公開しなかったのか」という批判の声が殺到。これにより野党が多数を占める参院が、国土交通大臣らの問責決議を可決するなど、菅政権の迷走は収まることがなかったのである。

また、一方で前幹事長だった小沢の「政治とカネ」問題や、やまぬ党内抗争、在日韓国人による違法献金問題なども浮上し、いよいよ政権は行き詰まりをみせていく。

そうした状況下の平成23(2011)年3月11日、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故が発生する。この未曾有の被害を受けて、改めて菅の危機管理能力が問われることになるのだが、ここに至ってついに「イラ菅」は“爆発”するのである。
(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」3月19日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。