「政治を科学する男」はなぜつまずいたのか? 鳩山由紀夫の異色すぎるリーダーシップ

異色の首相を生んだ「OR的思考」の正体

さて、そうした鳩山とは、どんな人物なのか。端的に言えば、政治家としては類いまれなキャラクターの持ち主である。

鳩山の政治家としてのリーダーシップは、歴代首相とは異なり、なんとも変わっていた。その一つが「政治を科学する」といった発想で、鳩山は衆院選に初出馬した際の演説で、これを臆面もなく前面に出し、ために「それはなんのこっちゃ?」と、いささか混乱した聴衆も少なくなかった。

その真意は、これまでのような「数」に頼った政治力学、官僚との馴れ合いを排して、政治家自らが合理的に分析して、意思決定すべきということであった。

こうした斬新な発想は、もともと鳩山が学者の道を目指し、東京大学工学部で学ぶとともに米国のスタンフォード大学に留学、ここで「問題解決学」(OR=オペレーション・リサーチ)の研究にのめり込んだことに、原点があるようだった。ORとは、簡略に言えば効率よく全体を動かすために、数学的な方法を用いて分析することである。

鳩山は以前、同志社大学文化情報学部の客員教授を務めていたが、その特別講義で学生に「OR的思考」を問うたことがあった。

例えば、この講義について雑誌『AERA』(平成21年9月7日号/朝日新聞出版)が、おおむね次のように紹介している。

鳩山の設問は、「10人の女性と順番に見合いをすると仮定し、そのなかで一番素晴らしい人にプロポーズできる確率を最大とするには、どのような順番で会ったらいいか」というものだった。この場合、前にお見合いして断った人には、もうプロポーズできない。そのうえで鳩山の解答は、以下のようであった。

「3人目までは目をつぶって見送り、4人目以降の見合いで〝この人〟と思う人にプロポーズすれば、一番素晴らしい人に巡り会える確率が高くなる」

どういうことなのか。1人目で決めてしまう、あるいは最後の1人まで待つと、当然、一番素晴らしい人に出会う確率は1割しかない。しかし、まず3人を見送れば、一番素晴らしい人に出会う確率が上がるとしたのである。