血糖値で社会問題の解決にチャレンジ! SympaFit代表・加治佐平が起こす“メンタル革命”

SympaFit代表・加治佐平(左)と放駒部屋の島津海(右)
村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前までにやっておくべきこと」。今回は「血糖値」のデータを解析し、アスリートの最適なパフォーマンスを引き出す「SympaFit」の開発者である加治佐平氏をインタビュー(後編)。勝負の世界に生きるアスリートを支える彼の大きな理念とは?

東大で血糖値を測る研究に熱中

一つの夢が潰えても、何度でも立ち上がり、挑戦する。のちに、ワールドトライアウトの設立にもつながる理念は、野球がすべてだった加治佐平が身をもって示してきたことでもあった。

「大学野球を終えて、それまでの人生のすべてだった野球はきっぱり引退しました。思い返せば後悔だらけです。なぜうまく投げられなかったのか。プロ野球選手になることだけを考えて生きてきた自分が、その後、何をすればいいのかも分かりませんでしたが、せっかく東大があるんだし、そこから大学院に進んでゲノムDNA、バイオ工学の研究をして博士号を取り、研究員として就職しました」

立ち迷ったときに、東大があった。勉強はしておくものである。業界最大手の三菱レイヨン(現・三菱ケミカル)に就職した加治佐は、半導体を使ったあらゆる技術と知識を得てゆく。

「会社員時代に得た半導体を使って生物をセンシングする技術を、大学院でやっていたバイオの研究に組み合わせてみようと思ったのが、後の半導体を使った血糖値の測定につながります。会社は4年勤めましたが、東大でバイオセンサーの研究員募集を見つけ次はそこに入ります。研究分野にはがんの早期発見などがありましたが、そこで僕が選んだのが〝血糖値〟でした。そのときは涙から血糖値を測る研究に熱中して、あと少しだったのですが、これ以上は…という限界を感じるようになりました」

研究とは暗闇の中でひと筋の光を求め莫大なトライアンドエラーを繰り返す消耗戦のようなものである。加治佐は文字通り光を求めた。

電気を使った計測から、光で感度を上げようと、勤めていた東大ベンチャー企業を辞め“光のメッカ”徳島大学へ。時に2019年。ワールドトライアウト設立の年でもあった。

「これまでの経験や研究の中で『血糖値でアドレナリンが計測できるのでは?』という仮説を抱きつつ徳島へ行き、ワールドトライアウトで初めて実際に計測もできました。翌年、地元の徳島インディゴソックスでも戸田懐生(元巨人)をはじめ実証実験でデータを取り、そこで間違いないという確信も得ます。ただ、しっかりとエビデンスを取るには野球は複雑な要素が絡むので、純粋に1時間ほど走り続けるデータが欲しかった。『これは箱根駅伝しかない!』と’21年から3年間、東洋大の准教授として箱根など三大駅伝に出場するランナーのデータを集めました」

その結果、驚くべき結果を得た。人間の血糖値は通常100ぐらい。食事の後に起こる“血糖値スパイク”と呼ばれる現象でも180ぐらい。ところがランナーが走っているときは、300にまで上がっていたのだ。

この発見は、スポーツ医学の専門家も驚愕させた世界で初めての実証だった。

「血統値というものは、食事や運動で変化が起こるだけでなく、緊張や興奮という自律神経にも影響を受ける、つまり血糖値の変化でメンタルの状態を読むことができるようになりました。これは論文も書いて、特許も取得済みです。もちろん人によって血糖値の上がりやすさなど個人差がありますが、メンタルの安定とは、自律神経バランスが整っていること。それを、血糖値を見ながら、食事や運動によって改善できる。感情の起伏が激しい人も食事の仕方によって、落ち着かせることは可能です」

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