昭和を戦慄させた無差別テロの元祖「草加次郎事件」 封書爆弾から地下鉄襲撃までの“深すぎる闇”

都内各所で次々と爆弾騒ぎが…

11月20日午後5時すぎ、千代田区有楽町のニュー東宝映画劇場(現在のTOHOシネマズ有楽座)で『渇いた太陽』(監督・リチャード・ブルックス/出演・ポール・ニューマン)を見終わった女性(19歳=当時)がロビーのソファに紙製の筒が置かれているのを見つけた。

女性が座ったついでに何気なく手にしたところ、何かが擦れる音がして瞬時に発火、女性は左手に全治10日間の火傷を負った。

この爆発物はそれまで見つかっていた爆弾物と構造は同じだが、火薬を藁半紙で巻いてセロテープで止めただけの簡易なつくりで、筒には草加次郎のサインが記されていた。

それから1週間も経たない11月26日午後4時半ごろ、今度はニュー東宝近くの日比谷映画劇場(現在のシアタークリエ)の2階男性トイレで爆発騒ぎが起きた。爆発物は電池式で箱に衝撃が加わると発火する構造になっており、洗面台に置かれていた爆発物がドアの風圧で落下して爆発したものだった。

やはりここにも草加次郎のサインがあり、爆発物の一部から犯人のものと思われる指紋が検出された。

それから3日後の11月29日午後5時半ごろ、世田谷区玉川瀬田町の公衆電話ボックスに入った男性会社員(25歳=当時)が、棚の上に置かれた石川啄木詩集を発見。詩集を手に取った会社員が、名前が書かれたしおりのような紙切れを引き抜いた瞬間に爆発、会社員は左手に全治5日間の火傷を負った。

詩集は内部を繰りぬいて黒色火薬を詰め込んであり、紙切れを引き抜くと摩擦で発火する仕組みになっていた。いわば偽装爆弾だったのである。紙切れには草加次郎の名が書かれていた。

同じような本型爆弾は12月12日、浅草寺境内の観音堂の一隅にエラリー・クイーンの推理小説に偽装したものが見つかっている。こちらは電池式になっており、表紙を開くと爆発する仕組みだったが、幸い起動しなかった。

困窮のうちに夭折した悲運の天才詩人、そしてミステリー小説。そのセレクトには何かしらの謎解きが仕掛けられているようでもあるが、草加次郎はこの事件以降、犯行が途絶えることになる。

こうして爆弾魔の恐怖は次第に薄れ、所得倍増ブームと東京オリンピックに向けての建設ラッシュに沸く1963年を迎えた。

伝説の怪事件の裏側2】へ続く

週刊実話増刊『未解決怪事件の謎』より一部抜粋