高市自民党に飲み込まれた維新「12月崩壊危機」

高市早苗、吉村洋文 (C)週刊実話Web
自民党と日本維新の会に早くも亀裂が生じた。高市早苗首相の対応如何によっては連立政権からの離脱も現実味を帯びてきている。「12月危機説」だ。少数与党ゆえの不安定な政権運営に木枯らしのような強い解散風が吹き始めている。

「公明党が10月10日に自民との連立を解消した直後、自維は急接近し高市政権が誕生した。そのときの維新の連立条件の柱は2つ。衆院議員定数1割削減と副首都構想だ。
中でも、議員定数削減は今国会で具体的に取りまとめて、法案を可決することが最優先と強く主張した」(政治担当記者)

維新にとって、どうしても譲れない衆院議員定数削減案。だがここにきて自民党内には先送り、慎重論の意見が日々強まっている。

それを際立たせたのは、自民党の鈴木俊一幹事長の11月10日の会見だ。

衆院議員定数削減を巡り「具体的な結論を今の臨時国会で決め切るのは難しい」と発言。これに対し維新の吉村洋文代表は翌11日、怒りをにじませた。

「維新の会と自民党で定数削減の協議をして結論を出して法案を出す。これは連立合意書でも合意している内容。もうやろうよ、それを。議員定数削減を。だって(自民党は)約束したじゃないですか」

別の会見でも「高市さんは約束を破るような人ではない」とも牽制した。

一方、自民内では鈴木幹事長以外にも梶山弘志国対委員長、逢沢一郎元国対委員長ら幹部が「定数削減は各党の意見を聞き、丁寧に議論する」と主張。

同法案成立を主導する維新の藤田文武共同代表は12日、「アイデアや法案が出てくる前に、後ろ向きなことをゴチャゴチャ言うのは、どういうつもりで言ってらっしゃるのか」と反発した。

「自民は政権維持のため、維新案を丸呑みした。その腹は一度取り込んでしまえば、今後はのらりくらりどうにでもなるという考えがある」(政治アナリスト)

維新が自民党と連立を組む際、松井一郎前大阪市長は吉村代表に「自民党は鵺みたいなところやから、おまえが思ってるようなことには簡単にはならんぞ。腹括っていかんとあかん」とアドバイスしたという。

もちろん、維新も躍進する国民民主党や参政党に押され気味で党勢に陰りがあったのは否めない。公明党の連立離脱をこれ幸いに、党勢回復の起爆剤にしたい内実はあったはずだ。

過去、自民党と連立政権を組み、飲み込まれ消えていった政党は少なくない。

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1994年の「自社さ連立」

奇しくも、自維連立政権協議中の10月17日、101歳で亡くなった村山富市元首相は元日本社会党委員長。1994年、自民党、新党さきがけと「自社さ連立」を組み、首相に担ぎ上げられた。

「社会党は本来、社会主義思想を基に労働者や社会的弱者らの意見を代弁する党。経営者サイドに軸足を置く自民党とは真逆です。
連立政権入りで社会党の存立意義が曖昧になり、系譜の社民党の存続も危ぶまれる始末。新党さきがけ、自由党…。自民党と連立を組んで生き残っているのは、創価学会を支持母体にする公明党だけです」(同)

11月12日の参院予算委員会。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は高市氏にガソリン暫定税率廃止に感謝の意を伝えた後、今度は所得税控除枠178万円への引き上げを求めた。

高市氏は「共に困難な関所を越えましょう」と共闘を呼び掛けた。

「高市首相が一度離れた国民民主へ再びラブコールを送っていると感じた」(維新関係者)

高市氏が自民党総裁選勝利後、まず連立入りを仕掛けた先が国民民主党だ。

しかし、公明党の連立離脱で高市氏は議員数の多い維新に舵を切った経緯がある。

「高市政権は裏金事件に関与した佐藤啓参院議員を官房副長官に起用した。野党は猛反発し、佐藤氏は参院議院運営委員会を出禁状態となっているうえ、維新の藤田共同代表にも公金還流疑惑が持ち上がった。
“ダブル裏金”のダーティーなイメージを嫌った自民は、維新から国民民主への連立鞍替えを模索しているという情報も飛び交っています」(シンクタンク関係者)

自民幹部はこう嘯く。

「藤田氏は議員定数削減で『自民はゴチャゴチャ言うな』と吠えている。その言葉はそっくり藤田氏に返したい。高支持率の高市氏は維新による連立離脱解散だって仕掛けられるんだから」

JNNが行った世論調査(11月1~2日)で高市内閣の支持率は82.0%。政権発足直後の支持率としては、’01年以降で小泉純一郎内閣の88.0%に次ぐ歴代2位。

また、13日発売の週刊文春による「衆院選当落予測」でも自民党は241議席の圧勝と予想している。

当然、高市氏にしても自民単独過半数が見えてくるなら衆院解散、総選挙は望むところだろう。

「首相は“議員定数削減”の解散を否定した。だが、維新が定数削減をゴリ押しし連立離脱に走り出したら、解散総選挙はアリだ。自民と維新は選挙協力しないことになっているから都合もいい」(高市氏側近)

高市氏の台湾有事における「存立危機事態」発言も国内外で物議を醸している。衆院解散ならその是非を国民に問うことができ、まさに一石二鳥だ。

「維新が自民の定数削減法案先延ばしに怒り、連立離脱なら『副首都構想』もオジャン。維新支持層からも執行部の見通しの甘さを批判され、党崩壊は免れないでしょう」(政界消息筋)

維新は妖怪“鵺”に飲み込まれるかの瀬戸際だ。

「週刊実話」12月4・11号より