北朝鮮“非核化”崩壊 高市早苗首相が日朝首脳会談打診の「丸腰外交」

高市早苗(C)週刊実話Web
10月28日、高市早苗首相とトランプ米大統領による日米首脳会談が行われた。

トランプ氏の訪日は2019年6月以来となる6年ぶり4回目で、第2次政権発足後は初めて。今回の会談の焦点は、日米同盟強化の再確認や首脳同士の信頼関係構築、防衛・経済に関する諸案件を前に進めることにあった。

「高市首相はトランプ氏の信頼が厚かった安倍晋三元首相の後継者であることをことさら強調し、トランプ氏も支持した。
一方、10月31日、韓国・慶州でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて実現した日中首脳会談は、習近平国家主席が高市氏から尖閣・台湾・人権問題などで意見される場面があった。
高市首相は就任1カ月もしないうちにインドのモディ首相や韓国の李在明大統領らと会談したほか、APECサミットだけでなく東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットにも出席した」(政治アナリスト)

実は、高市氏との日中首脳会談の前日、習氏は慶州での米中首脳会談で台湾の“た”の字も切り出せないほどトランプ氏の“脅し”を食らっていた。

「米中会談の直前、トランプ氏は自身のSNSで、『韓国の原子力潜水艦の建造を承認した』ことを明らかにしていたのです。また、会談前日には、米国防総省に核実験の再開を指示していました。
韓国の原潜は米国で建造されるでしょうから、米国の兵器が搭載可能な構造になることは容易に察しがつきます。
韓国は核搭載を否定していますが、韓国の原潜が台湾海峡を潜航した場合、中国の台湾侵攻は実質不可能となり、習氏はこれで凍り付いてしまい、日中会談の際にはもぬけの殻状態に陥っていたのです」(外交関係者)

高市首相はトランプ氏をノーベル平和賞に推薦する意向を示したが、その背景には、日米間の強固な信頼関係を後ろ盾に、北朝鮮との間に抱える「拉致」と「朝鮮半島の非核化」問題を解決したい狙いがある。

拉致問題については、’02年9月と’04年5月の2回開かれた日朝首脳会談からすでに20年以上の歳月が流れている。結果的に日本人拉致被害者の5人が帰還したが、祖国の土を踏めない被害者はまだ数多くいる。

「歴代政権は『条件をつけずに向き合わなければならない』(安倍晋三首相)、『私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい』(岸田文雄首相)として、政府関係者らが複数のルートで北朝鮮側と接触したが、いまだ会談は実現していません。
11月3日に東京都内で開かれた日本人拉致被害者の帰国を求める『国民大集会』で、高市首相は『すでに北朝鮮側には首脳会談をしたい旨を伝えている』と明かし、金正恩総書記との会談の実現に意欲を示しています。
首相は拉致問題を『内閣の最重要課題』と位置づけている。10月28日には訪日中のトランプ氏と共に拉致被害者家族と面会し、米朝会談実現の暁には拉致問題の解決を迫ってほしいと猛烈にプッシュしているのです」(北朝鮮ウオッチャー)

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進まぬ「非核化」交渉と「悪の核クラブ」の現実

日本は隣国の「核の脅威」という問題の解決も図らなければならないが、原潜建造などその対処法には国内世論というハードルもあり、武力を背景にした交渉はしづらい。

これまで西側諸国は一貫して、北朝鮮の「非核化」あるいは核ミサイル開発計画の「完全、検証可能かつ不可逆的な廃棄」を主張し、幾多の制裁を科してきたが、逆に北朝鮮の核ミサイル開発はやむことなく進められ、年々強化されている。

「数カ月前にはロシアが北朝鮮の非核化を『済んだ話』と一蹴し、中国もこれほど直接的ではないにしろ、公式には『非核化』に言及しなくなりました。
9月に北京で行われた中朝首脳会談後のプレスリリースには、それまでの同種文書には言及のあった『朝鮮半島の非核化』の文字が消えています。
東アジアにおける『中朝露の悪の核クラブ』はすでに成立してしまったのです」(国際ジャーナリスト)

親北政権である韓国の対応にも微妙な変化が見られる。米朝首脳会談が行われた場合には「核兵器の廃棄」ではなく「凍結」で合意することに同意とのスタンスを示した。韓国は「非核化」を長期目標にシフトさせたのだ。

すでに北朝鮮は非核化した場合にもたらされる国連制裁の解除や経済支援などには関心がない。

自国経済は明らかに中朝貿易の再開やロシアからのエネルギー供給で一時の苦境を脱したからだ。もっとも、国民生活が苦しいのは確かだが、独裁国家の北朝鮮では統治の障害にならない。

「今や北朝鮮は、米本土全体をカバーする射程1万5000キロのICBMを複数種類保有し、朝鮮労働党創建80周年記念軍事パレードでは、軽量で高強度な素材が用いられたことで従来のICBMより射程が延び、複数の弾頭を搭載し多弾頭化される可能性がある『火星20』を初公開した。
極超音速滑空体(HGV)ミサイルや、ウクライナ戦争で現代戦における重要性が再確認されたドローンなど、東アジアはもちろん、グローバルレベルにおいても深刻な事態を引き起こす兵器が多数登場した。
北朝鮮にとって、核兵器はすでに交渉による取引の対象ではなくなったのです。正恩氏は80周年軍事パレードで、アメリカ主導の西側諸国には従わない意思をはっきり示しました」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

高市首相は丸腰外交で「拉致問題」「非核化」にどう立ち向かうのか。

「週刊実話」11月27日号より