「自民党をブッ壊すッ」悪しき派閥政治を断ち切る小泉純一郎の改革

息子・進次郎は「まだ若かったということだ」

こうしたなか、さすがに政権後半では緊張感が緩んだのか、閣僚、党役員らの失言が続き、世論の小泉への批判も目立ち始めた。

例えば、小泉自身も議員になる前に“幽霊社員”として厚生年金に加入していたことが露呈すると、「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろだ」という“珍答弁”で煙に巻いた。

さらに、言葉に窮すると今度は「そんなこと常識でしょう」と、首相にしてはなんとも雑な答弁で逃げたものであった。

ために、折から年金不信がピークの時期でもあり、さすがの国民も、もはやこの辺でお引き取りをと、小泉へ“引導”を渡したのである。

その小泉は平成21年(2009年)9月、衆院選を前に政界を引退したが、世間からの「世襲」批判もなんのその、次男・小泉進次郎に地盤を譲っている。

現在44歳の進次郎は、今回の自民党総裁選に農相として2度目の挑戦をしたが、各メディアがそろって「小泉勝利」をうたったにもかかわらず、決選投票で高市早苗に“逆転勝利”を許してしまった。

形としては、党内に影響力を持つ自民党重鎮による「ご都合主義」の結果とみてよかったが、この“無理強い”を目にしたあと、進次郎の父である小泉は、こう短く、感想を述べている。

「(進次郎は)まだ若かったということだ」

自身は派閥跋扈のなか、3度目の挑戦でようやく手にした首相のイスへの苦汁が、にじみ出ていた言葉に聞こえたのであった。

(本文中敬称略/次回は安倍晋三)

「週刊実話」11月20日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。