新田恵利『冬のオペラグラス』は「おニャン子系ど真ん中ポップス」の最高峰

難しくなってきたアイドル音楽シーンをど真ん中へ引き戻す名曲

例えば同年のおニャン子クラブ『じゃあね』や福永恵規『風のInvitation』などとともに、何だか難しくなってきたアイドル音楽シーンを、ど真ん中へど真ん中へと引き戻す役割を果たした名曲です。

では、どの辺がど真ん中ポップスなのか。ここではイントロに込められたアメリカンポップスの要素を見ていきましょう。

まずリズムとコード進行は、ポップスのお手本といえるザ・ロネッツ『ビー・マイ・ベイビー』(’63年)みを感じさせます。

またメロディーは、ザ・ビーチ・ボーイズ『ファン・ファン・ファン』(’64年)のエンディングに裏声で歌われるメロディーと一緒。

いや、パクリ云々だと言っているのではなく(なぜなら歌メロは完全にオリジナル)、むしろ有名なアメリカンポップスの名曲をリスペクトし、オマージュしたイントロとして、私には響くのです。

新田恵利のボーカルは、世評通り、決して上手いとはいえませんが、それでも、突き抜けた歌い方が、この底抜けに明るいど真ん中ポップスに、いい感じで合っているじゃないですか。

さる9月23日、東京カルチャーカルチャーで行われた「昭和アイドルアーカイブス」というイベントを見に行きました。お目当てはゲスト出演する新田恵利。

御年57歳。笑わせるツボ、的確なオチを心得た見事なトークは、アマチュアどころか、それはそれは実にプロフェッショナルなものでしたよ。

「週刊実話」11月20日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。