新田恵利『冬のオペラグラス』は「おニャン子系ど真ん中ポップス」の最高峰

新田恵利『冬のオペラグラス』
【スージー鈴木の週刊歌謡実話第14回】
新田恵利『冬のオペラグラス』作詞:秋元康、作曲:佐藤準、編曲:佐藤準、1986年1月1日発売

「ポップスの復権」としてのおニャン子の価値

おニャン子クラブほど、存在が低く見積もられているムーブメントはないでしょう。

いや、正直に言えば、私も決して高く見積もってはいません。

最近テレビでよく流れている昔の歌謡曲の映像をつないだだけの番組で、圧倒的な表現力を見せる松田聖子や中森明菜の合間に、例えば『セーラー服を脱がさないで』(’85年)なんかが流れた瞬間、’85年当時浪人生、いわば「おニャン子直撃世代」の私ですら、そのアマチュアっぽさにガクッとくるのですから。

でも「おニャン子なんて、日本の音楽シーンの中でなんの価値もなかった」などと言われると「ちょ、待てよ」と返したくなる。

私が思うのは「ポップスの復権」としてのおニャン子の価値です。

’85年といえば、松田聖子は『ボーイの季節』、中森明菜は『SOLITUDE』の年。なんというか、ちょっと難しくなってきていたあたり。

そんな中、おニャン子クラブが、どこにも難しいところのない、あっけらかんとしたど真ん中ポップスを打ち出した。

秋元康の企画性・戦略性も大きかったけれど、ど真ん中ポップスによる音楽シーンの中での差別化が、おニャン子大ブームを促したという側面も確実にあった。そう思うのです。

前置きが長くなりました。今回は、そんな「おニャン子系ど真ん中ポップス」の最高峰、新田恵利『冬のオペラグラス』(’86年)を取り上げます。

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