岩崎宏美『ロマンス』は際立つ歌唱力で「アイドル=歌が下手」を払拭した金字塔的名曲

岩崎宏美『ロマンス』

【スージー鈴木の週刊歌謡実話第12回】
岩崎宏美『ロマンス』作詞:阿久悠、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平、1975年7月25日発売

ピンクレディーに次ぐヒット!

1970年代アイドルの曲の中で、いちばん売れたものは、果たして何か。

もちろん「アイドル」をどう定義するかにもよりますが、まずは、別格的に売れたピンク・レディーの曲であり、その中でも150万枚超と、最も売れた『UFO』(’77年)ということになります。

ではピンク・レディーを除いたら、どうなるか。ここで浮上してくるのが、今回取り上げる岩崎宏美『ロマンス』。

売上枚数は約90万枚。この水準は、少なくとも「新御三家」(西城秀樹、野口五郎、郷ひろみ)のシングルで超えるものはなく(西城秀樹『YOUNG MAN』-’79年-ですら約80万枚)、また「花の中3トリオ」(森昌子、桜田淳子、山口百恵)でも同様なのです(山口百恵『横須賀ストーリー』-’76年-ですら約60万枚)。

同水準を売り上げたシングルとして沢田研二の『時の過ぎゆくままに』(’75年)や『勝手にしやがれ』(’77年)がありますが、当時の沢田研二は、すでにアイドルという感じではありませんでした。

では、この『ロマンス』、なぜ、それほどにも売れたのでしょう。

まずはもちろん、岩崎宏美の歌唱力が大きかった。リリースされたのは’75年。浅田美代子や風吹ジュンなどによって「アイドル=歌が下手」というイメージが広がりつつあったこともあり、そんな中、際立って響く、岩崎宏美の歌唱力は、手放しで受け入れられたように記憶します。

ただポイントは、歌唱力といっても、ベテラン歌手のような、感情・お涙・ビブラートのマシマシという味付けの濃い目、いわゆる「歌唱力」ではなく、すっぴんのように飾り気のないまま、どこまでも天高く伸びていく、当時まだ16歳、岩崎宏美ならではの声が効いたのでした。

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