『なんてったってアイドル』は小泉今日子がアイドルから「キョンキョン」に生まれ変わった歴史的1曲

小泉今日子を支えた“文化系ヤンキー感”

理由の一つは「文化系感」。読書家で、文章も達者で、そういう素養もあってカルチャー界隈でもてはやされる。

彼女の『黄色いマンション 黒い猫』(新潮社)という本を読んで、その流れるような筆致に、物書きの端くれとしてジェラシーを感じたのを、昨日のことのように思い出します。

でも。もう一つの理由は、ある意味「文化系感」の対義語になりますが「ヤンキー感」だと思うのですよ。

その言動に、未だに漂う「厚木のヤンキー感」。いや、これはほめ言葉。「いいものはいい」「嫌のものは嫌」と、はっきり言う感じ。

世間的固定観念に束縛されず、ましてや忖度など一切せず、「グッド!」「ノーグッド!」と感覚的に判断するさまに、いい意味でのヤンキー的かっこよさが漂い、同世代、さらには下の世代の共感を集める。

まとめると、そんな「文化系ヤンキー感」こそが、彼女を未だにキラッキラさせていると思うのです。そして根っから文化系の私などは、ヤンキー成分をもっと摂取せねばと思ったり。

『なんてったってアイドル』は歌います―「ずっとこのままでいたい」「年なんかはとりたくない」。

40年後の答え合わせ。あなたは、あなたの歌った通りに輝いていますよ。

「週刊実話」10月23・30日号より

スージー鈴木

音楽評論家。1966年(昭和41年)、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。