金正恩父娘「訪中記録映画」公開で北朝鮮全土に“失望感”が拡散か

訪中時は武器の管理、住民監視を徹底

「記録映画公開は当局にとって『正恩氏の外交的威光』と『ジュエ氏後継者』を示唆する意図が強かったが、国民の間ではむしろ中国との格差を直視させられる結果となり、失望と同時に中国依存への期待を高めただけに終わりました」(同)

実は正恩・ジュエ氏の父娘訪中に合わせ、北朝鮮の警察組織である社会安全省は各地の安全部に対し、武器・弾薬や爆発物の管理を徹底するよう指示している。最高指導者の海外滞在中に不測の事態が発生することを防ぐ狙いだ。

さらに、今回の訪中は事前に公表される異例の形式となったことから、安全部の所属要員は住民の言動を細かく監視。住民の会話は情報網を通じて掌握され、住民の間では「軽々しく話すこともできない」と、閉塞感が漂ったという。

2011年12月に金正日総書記が死去してから14年。父親の後を継いだ正恩氏は最高指導者の地位を盤石にしたと思われるが、不安材料はある。

「米国議会が出資する『ラジオ・フリー・アジア』は昨年6月、北朝鮮が’11年に制作した正恩氏の母・高容姫を称える『偉大な先軍朝鮮の母』と題するビデオディスクを密かに回収しました。
このビデオは一般に公開されず、高位の幹部にのみ配布されたものですが、これが正恩氏の致命傷になる恐れがあるのです」(国際ジャーナリスト)

高容姫の墓は「革命烈士陵」にあり、墓碑には「偉大な先軍朝鮮の母、同志高容姫」と刻まれている。

「偉大な母の正体は、北朝鮮では最下層の成分(身分)である日本の大阪生まれの在日朝鮮人ですから、当局としては出自に関する情報を徹底的に隠蔽せざるを得ません。
なぜなら北朝鮮の建国神話に致命的なダメージを与えかねないからです。正恩氏が権力を固めるにつれ、この矛盾は無視できなくなってきている」(同)