西城秀樹『ラストシーン』はいけ好かないガキだった私に「大人の階段」を見せつけた神曲

西城秀樹『ラストシーン』
【スージー鈴木の週刊歌謡実話第10回】
西城秀樹『ラストシーン』作詞:阿久悠、作曲:三木たかし、編曲:三木たかし、1976年12月20日発売

「秀樹は落ち着いた曲、歌ったらええのに」

この連載、『週刊実話』というメディアの読者層やムードを考え、女性アイドルのメジャーなヒット曲を基本に据えつつ、男性歌手の曲も、しばしば入れていきたいと思っています。

それも、バランスを考えて、読者(私と同世代で、ちょっとマニアな方想定)の方々の記憶の奥底に眠っているような、渋い名曲を。

1970年代後半は、私は小学校高学年から中学生になるというタイミング。テレビや歌謡曲が好きで好きでたまらない子供でした。

好き過ぎて、歌謡曲を素直に楽しむのではなく、斜めから批評的にこんなことを言う、いけ好かないガキになっていまして。

――「西城秀樹は、もうちょっと落ち着いた曲、歌ったらええのに」

私が小4だった’76年の西城秀樹のシングルは『君よ抱かれて熱くなれ』『ジャガー』『若き獅子たち』。作詞:阿久悠、作曲:三木たかしによるタイトルからして暑苦しくて動物的なラインアップに「沢田研二の『時の過ぎゆくままに』みたいな落ち着いた曲歌ったらええのに」なんて思っていたのです。

今から考えれば、かっこよ過ぎるヒデキへのやっかみがあったような気もしますが。

そんな私の思いを阿久悠・三木たかしが感じたわけはないにせよ、まさにヒデキ版『時の過ぎゆくままに』といえる曲が、続くシングルに選ばれたのです。それが今回取り上げる『ラストシーン』なのでした。

あれ? この曲知名度低いかしら。それでも、先に取り上げた郷ひろみ『恋の弱味』同様、この隠れた名曲を愛する人は少なくないと信じて、臆せず話を続けましょう。

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