北朝鮮“ポスト金正恩”の大本命は? 娘・金ジュエ後継者説には異論続出

ジュエ氏後継説を裏付ける根拠も2つ

「後継者を探るうえで、家父長制という視点は韓国では根強く、金正日総書記の後継でも長男・金正男後継説を採る専門家は多くいました。
日本の北朝鮮ウォッチャー第一人者も正男説でした。ただ1人、韓国に亡命した最高位脱北者である黄長燁・朝鮮労働党国際担当書記は『王(正日)が、最も愛した人(高容姫=その子供・正恩)が後継者となる』と的中させています。
さすが主体思想の構築者だけあって、北朝鮮はもはや家父長制の儒教国家ではなく、独裁者が『カラスは白い』と言えば国民はそれに従う社会に変貌している」(北朝鮮ウォッチャー)

ジュエ氏後継説を裏付ける根拠も主に二つある。

9月2日から4日にかけ、金父娘は中国が日本との戦争に勝利してから80年を祝う記念行事に出席するため、中国を訪問した。その際、北朝鮮の随行員が奇怪な行動に出たと韓国の国家情報院は報告している。

「ジュエ氏は中国訪問中、北朝鮮大使館に籠り、公の場に姿を現すことはありませんでした。治外法権である大使館内なら情報が外部に漏れる可能性はほぼありません。
にもかかわらず、スパイを警戒したのか、使用済みのティッシュやゴミ、排泄物まで現地に残さずすべて持ち帰ったのです。ジュエ氏が正恩氏の次と目される大きな理由です」(外交関係者)

もう一つは、北朝鮮では代々、最高指導者が後継者を中国指導部に紹介する慣行がある点だ。

正恩氏も2010年8月、父の金正日総書記が中国東北部を歴訪した際、同行していたとされる。その直後の同年9月、朝鮮労働党代表者会で公式の場に登場したのだ。

「とはいえ、ジュエ氏は’22年11月に北メディアの公式報道に登場して以来、肉声が漏れたことは一度もなく、今回の訪中では父に同行したものの、出迎えた中国側要人と言葉を交わす様子も伝えられませんでした。
中国での公式行事に出席した様子もない。後継者としてジュエ氏のお披露目が訪中の目的ではなく、今回の訪中記録映画を早々と公開したように、国内向けプロパガンダの意味合いが強かったのではないか」(前出・ウォッチャー)