松田聖子『赤いスイートピー』は全国のオクテ男子に勇気を与えた一曲だった

松田聖子『赤いスイートピー』
【スージー鈴木の週刊歌謡実話第9回】
松田聖子『赤いスイートピー』作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂、編曲:松任谷正隆、1982年1月21日発売

「そんな男、今どきおるんかい!?」

さて。9月19・20日、東京国際フォーラムにて、松本隆・作詞活動55周年記念コンサート『風街ぽえてぃっく2025』が開催されます。

あっ、ここでいきなり宣伝ですが、会場内で販売される公式パンフレットに、私も一文寄せていますので、現地に行かれる方がいらっしゃれば、ぜひお買い求めください。

というわけで、今回は松本隆作品から何か、と思ったら、この連載では、松田聖子の曲を、まだご紹介していないではないですか。

では『赤いスイートピー』はどうでしょう。ちなみに先のコンサートでは、20日の回で歌われるようですし。

曲の中で印象的なフレーズは何といっても―「何故 知りあった日から半年過ぎても あなたって手も握らない」

「そんな男、今どきおるんかい!?」と、当時の私の故郷・東大阪では、その方面でススんでいる同級生たちにツッコまれていた歌詞でしたが、ろくな経験のない中3(それも高校受験生)の私は心の中で密かに「ええやん…」と共感していたものでした。

’82年春、「オクテ男子」の恋愛風景――。音楽評論家・田家秀樹による『風街とデラシネ~作詞家・松本隆の50年』(KADOKAWA)には、この曲が作られた背景、オクテ男子が描かれた経緯が書かれています。まずは松本隆自身の言葉から。

――「週刊誌などで女子高生の初体験年齢が低下しているとかセンセーショナルに語られて、本当にそうなんだろうか、と思って書いたんだけど、あの歌がヒットしてそうじゃないと思えた」

1982年といえば、校内暴力全盛時代。男女関係も低年齢化しているという報道が加熱した頃でした。しかし、松本隆はそうではない、オクテ男子のオクテ恋愛の存在を見抜いていたのです。

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