不同意性交、中絶強要、殺意ほのめかし…交際半年で結婚したのは最低DV男だった

「精神病のお前が何を言ったところでムダだから」

4回目の中絶手術の際、穂香さんは麻酔で意識が遠ざかる直前に看護師から「バカな女」「何回子どもを殺せば気が済むんだか」と罵倒されたことをきっかけにウツ病になり精神科通いを始める。しかし…。

「これも夫にとっては好都合だったようで、私が『度重なる流産』が原因で病んだことを社内で言いふらし『精神的に病んだ妻を支える夫』として振舞うようになりました。これによって夫の評価はまた上がりました」

穂香さんは心配して訪ねて来た元同僚にそれとなく夫のDVを打ち明けたが、相手は首をひねるばかりだったという。

「みんな病んでいる私の言うことには耳を貸してくれない感じでしたし、夫もそう言って誤魔化していたみたいです」

Aさんは二言目には「精神病のお前が何を言ったところでムダだから」と穂香さんを牽制し、「自傷癖も有った方がいいな」と穂香さんの手首にナイフで傷をつけることもあったという。

「Aは『発作的に自殺する…っていうのも有りかもな。保険金も入るし』とまで言い出し、私に対する殺意までほのめかすようになりました。
『自分の家庭を持つ』という長年の夢もあってAとの結婚生活にしがみついていた私ですが、殺されては元も子もありません」

我に返った穂香さんは、Aさんの留守中に家を飛び出して警察に駆け込んだ。

穂香さんはその場で「被害届を出すよう」警察に言われたが「これ以上Aと関わりたくない」という気持ちから一旦保留とし、代わりにシェルターを紹介してもらった。

「シェルターで暮らしている時に弁護士を紹介してもらい、離婚が成立しました。離婚理由をAが周りにどう説明しているかは分かりませんが、特に知ろうとも思いません。ただAへの恨みは一生消えることはないと思っています」

DV男に限って外面が良いというのはよく聞く話であり、DV被害者は一種の洗脳状態にあるため、助けを求めたり逃げ出すことが難しいとも言われている。

どこの自治体でも「DV相談」のホットラインは設置してあるので、身に覚えのある方はまず声をあげて欲しい。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。