猫に秘められた「意外な法則」服部円氏による『ネコは(ほぼ)液体である』

『ネコは(ほぼ)液体である ネコ研究最前線』KADOKAWA/1600円(本体価格)
『ネコは(ほぼ)液体である ネコ研究最前線』著者:服部円(はっとり・まどか)
武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業後、ファッション誌の編集者として働く。ネコ研究に興味を持ち、2019年から社会人大学院生として大学院に進学。2025年3月、京都大学大学院で博士号(理学)を取得。

イヌに比べてネコの研究は難しい?

――ネコに興味を持ったきっかけは何ですか?
服部「美大を卒業後、ファッション誌の編集者をしている中で、ネコ研究をしている大学の先生に出会ったことです。
そこで初めてネコが学問として研究する対象になっていることを知り、自分でもネコ研究をしてみたいと2019年に社会人大学院生として大学院に進学。
ようやく43才で、ネコとヒトとの関連性についての博士号を取得しました。
本書ではたくさんのネコ論文の中から、厳選した39本の論文を紹介しています」

――イヌに比べてネコの研究は難しいそうですね。
服部「ネコは外に連れ出すのが難しく、飼育家庭にお邪魔して実験をさせてもらうことが多いのです。
また、ただ食べ物を与えられるよりも、対価を払って入手した食べ物を好む現象『コントラフリーローディング効果』は、ネコには確認されませんでした。
イヌなどの実験では褒美におやつをあげますが、ネコではそれが難しいということです」

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ネコのオスは左利き、メスは右利き?

――「ネコは液体である」は論文の一つだそうですが、ほかにどんな研究があるのでしょうか?
服部「私が出会った先生が行ったのが、『ネコは飼い主の声を聞き分けられるか』という研究です。
赤ちゃんに使う『馴化ー脱馴化法』というやり方で、知らない人の声と飼い主の声を聞き分けていることがわかりました。
一方、イグ・ノーベル賞を受賞した研究では、ヒトは録音したネコの鳴き声(ご飯待ち、知らない場所にいるとき、ブラッシング中)を聞き分けられないとの結果が出ています。
言葉での会話ができないからこそ、ヒトはネコが何を言っているのか、興味を惹かれるのかもしれません」

――ネコには意外な「法則」があるそうですね?
服部「「「ヒトは9割が右利きだといわれていますが、ネコにも利き手があるか調べた論文があります。
食べ物が入ったフードパズルをどちらの手で取ろうとするか、階段を下りる際にどちらの手(前足)から下りるのかを調べた論文があります。
結果は左右どちらが多いという明らかな差はみられませんでしたが、オスは『左手』を、メスは『右手』を好んで使うことが分かりました。
実はこのネコの利き手の研究は、私が小学1年生のときの夏休みの自由研究の課題でもありました(先日Xのポストがバズりました)。
自分でもすっかり忘れていたのですが、子供の頃の興味をまさか大人になって研究するとは思いもよらなかったですね」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」9月25日号より