裏歌舞伎町の老婆が行う驚愕の副業 ルポライター國友公司氏「みかじめ料の縮図のようで感動しました」

『ワイルドサイド漂流記 歌舞伎町・西成・インド・その他の街』文藝春秋/1,600円(本体価格)
『ワイルドサイド漂流記 歌舞伎町・西成・インド・その他の街』著者:國友公司(くにとも・こうじ)
1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。水商売のアルバイトと東南アジアでの沈没に時間を費やし、7年かけて大学を卒業。2018年、西成のドヤ街で生活した日々を綴った『ルポ西成 ―七十八日間ドヤ街生活―』(彩図社)でデビュー。

「危ない街」と広まり「危なさ」半減

――自ら路上生活を営むなど、体当たりルポが話題です。何が國友さんを駆り立てているのでしょうか?
國友「デビュー作『ルポ西成』は大学を卒業した直後に出版業界の右も左も分からないまま現地入りして書いた作品です。
取材といっても何をすればいいか分からなかったので、その場所に住み、働き、出会った人たちと時間を過ごしました。話を聞いていくよりも、自分で体験してしまったほうがより深く、より早く、現場を知ることができます。
自分としては面倒な手続きをすべて飛ばして、楽をしている感覚に近いです」

――大阪・西成はどんな街でしたか?
國友「近年はダークツーリズム的な日本人観光客が増え始め、彼らをターゲットにした飲食店も増えています。
ドヤや飯場で暮らす西成の住人たちは、『ここは危ない場所だ』とよく口にしますが、近年では『西成=危ない街』というイメージがネット上で広まりすぎた結果、一般の人々が観光や興味本位で訪れるようになりました。
その結果、かえって街の『危なさ』が薄れてきたようにも感じられます。『危ない街』として名が知られすぎることで、逆にその危険性が薄れていく、何とも皮肉な現象です」

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「次は青森県恐山のスナックへ行こうと思っています」

――長年、東京・歌舞伎町に住んでいたそうですね。
國友「ヤクザマンションに1年、裏歌舞伎町(大久保通りと職安通りの間)に5年住みました。
裏歌舞伎町のラブホテル街には夜になると今でも外国人娼婦が立っていますが、印象的なのは一帯のマンションの清掃を請け負っているアルバイトの老婆でした。
その老婆は娼婦たちから1日1000円を徴収し、マンションの踊り場を売春場所として提供しているのです。一帯の娼婦は10人以上いたので、結構いい稼ぎになっていると思われます。みかじめ料の縮図を見たようで感動しましたね」

――今後、訪れてみたい街はありますか?
國友「今は日本の『へき地』に興味があります。先日、北海道・稚内のスナックを訪れました。入ったのは50年近く営業を続けている店。稚内の半世紀にわたる歴史の一端に触れたような気がしました。
ただ、そこで語られる出来事や人々の記憶は、公的な資料に記録されているわけでなく、あくまで口伝えによって受け継がれてきたもの。
だからこそ私のような人間が後世に残していく必要があると感じています。次は青森県恐山のスナックへ行こうと思っています」

(聞き手/程原ケン)

「週刊実話」9月11日号より