ザ・スパイダース『あの時君は若かった』は若々しいエバーグリーンであり続ける名曲

洋楽的な洗練感と日本人向け親近感が両立

引き合いに出すのも恐縮ですが、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ『ブルー・シャトウ』(’67年)、ザ・タイガース『花の首飾り』(’68年)、ザ・テンプターズ『エメラルドの伝説』(’68年)など、他の人気GSの少女趣味的で物悲しげな人気曲と聴き比べていただきたい。

『あの時君は若かった』のずば抜けたエバーグリーン感が、逆説的に理解できるはずです。

スパイダースの音楽的なキーパーソンはかまやつひろし。とにかくさまざまな最新洋楽を取り入れながら、でもそのまんまではなく、日本人好みのするエッセンスを振りかけて、日本人が飲み込みやすい音楽を生み出すのが得意だった人。

この曲についても(簡略化して表記すると)「F-G-Em-Am」という、いまJポップでめちゃくちゃ多用されるコード進行を’68年の段階で早々と使っています(詳しくは拙著『〈きゅんメロ〉の法則』を)。

またジャズっぽい感覚のエンディングもとてもおしゃれ。

しかし、メロディー自体はとてもポップで、さらにそのメロディーが堺正章と井上順のあの声で歌われると、親近感のようなものが一気に立ち込めてくる。

結果、洋楽的・ジャズ的な洗練感と、日本人向け親近感が見事に両立して、この曲はエバーグリーンになれたのでした。

そんな『あの時君は若かった』は、これからもずっと若々しいエバーグリーンであり続けることでしょう。

最後に余談。

8月23日にBSフジで放送された『HIT SONG MAKERS グループサウンズ・スペシャル』で井上順は「『日本でいちばんのエンターテイナーは』と聞かれたら、まっさきに『堺正章さん』と答えます」と持ち上げた後、「『西遊記』の孫悟空をノーメイクでできるのは堺さんだけ」と見事に落とす。

この、いつでも笑えそうなオチもまたエバーグリーン! 

「週刊実話」9月25日号より