アイドルポップスの原点・南沙織『17才』は「かわいい」+「少女の素」をまるごと詰め込んだ歌だった

南沙織『17才』
【スージー鈴木の週刊歌謡実話第7回】
南沙織『17才』作詞:有馬三恵子、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平、1971年6月1日発売

装飾を一切排したことが成功の要因

日本アイドルポップスの源流。「この曲からアイドルポップスが始まった」と一般によく言われる曲です。

こういう話、そもそも「アイドル」の定義からして異論反論が来そうなものなのですが、この曲をアイドルポップスの起点とすることへの反対意見など聞いたことがありません。そのぐらい歴史の転換点として、誰もが認める1曲なのだと言えます。

では、ここで「アイドルポップス」を私なりに定義してみましょう。

メインターゲットはハイティーン(10代後半。ただしピンク・レディーの登場でローティーンまで広がる)、歌(唱力)は魅力の単なる一要素で職業作家による作詞、作曲、編曲も然り。ルックスやファッション、ダンスも含めた、トータルの商品性で勝負する音楽。

メロディはとにかくポップかつシンプル、歌詞は若さをベースとしたラブソングが中心。テレビの歌番組を告知媒体として、シングル盤の販売で回収するシステムの音楽――とでも言えばいいでしょうか。

さてこの『17才』、筒美京平のポップなメロディーはもちろん素晴らしい。リン・アンダーソン『ローズ・ガーデン』(’70年)が元ネタなのは有名ですが、私に言わせれば『ローズ・ガーデン』よりこちらの方がいい。

また、実にキャッチーなイントロは、日本アイドルポップス降臨の前奏曲のようにも聴こえます。

しかし、です。この曲の魅力の根幹はタイトルだと、思うのです。

『17才』――この曲は、まずタイトルから作られたらしい。言葉をひらめいたのはCBSソニーの有名プロデューサー・酒井政利。「じゅうななさい」。「歳」ではなく「才」。英語読み「セブンティーン」にするだけでも装飾過剰だと、彼は思ったといいます。

そうです。装飾を一切排した、素のキャラクターで勝負したこと。これこそが『17才』、ひいては南沙織成功の最大の要因だったのでした。【スージー鈴木の週刊歌謡実話】アーカイブ