アイドルポップスの原点・南沙織『17才』は「かわいい」+「少女の素」をまるごと詰め込んだ歌だった

アイドルポップスの歴史が動き出した

さらに有馬三恵子による歌詞もいい。「♪私は今 生きている」――リリース時、まだ16才だった南沙織の、ありのままの生の息吹が描かれています。

最近、某アイドルの『かわいいだけじゃだめですか?』という曲が流行っています。

だめじゃないですよ。むしろ「かわいい」はアイドルの基本要件でしょうが、ここで確認しておきたいのは、日本のアイドルポップスは「かわいい」だけじゃない、少女の素の生をまるごと表現した歌から始まったということ。

返還前の沖縄から、パスポートを持って「来日」した1人の少女が「♪私は今 生きている」と朗々と歌う。シングルは売れてチャートの2位を獲得。

そしてこの曲で、日本レコード大賞の新人賞に輝き、紅白にも出場――その瞬間、日本アイドルポップスの歴史が動き出したのです。森高千里がこの曲をカバーする18年も前の出来事でした。

「週刊実話」9月18日号より

スージー鈴木

音楽評論家。1966年(昭和41年)、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。