『ラストタンゴ・イン・パリ』過激性描写の裏側を描く!『タンゴの後で』は根深い問題に切り込む一作

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【やくみつるのシネマ 小言主義 第284回】『タンゴの後で』
19歳の女優マリア・シュナイダー(アナマリア・ヴァルトロメイ)は新進気鋭の監督ベルナルド・ベルトルッチ(ジョゼッペ・マッジョ)と出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』でまたたく間にトップスターに駆け上がる。
しかしその一方で、48歳のマーロン・ブランド(マット・ディロン)との過激な性描写の撮影シーンは彼女に大きなトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落としていく。

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主演女優はドラッグまみれの人生に転落

アカデミー賞受賞作『ラストエンペラー』などでも知られる巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の初期の代表作『ラストタンゴ・イン・パリ』。その過激な性描写シーンで、1972年の発表当時、一大センセーションを巻き起こした問題作でした。

その撮影の裏側で何があったのか。実話を基に、若い頃から助監督として働き、映画業界の現場をよく知る女性監督が描いたのが本作です。

主演女優のマリア・シュナイダーは当時、19歳。相手役はマーロン・ブランド48歳。世界的な名優と新進気鋭の監督から、本人の承諾もなく屈辱的な演出を強制されたことに対して抗議の声を上げた初めての女優でもあります。

しかし、そうした被害者の声は無視され続け、50年以上経った今、ようやく世界中で問題が表面化してきたという状況です。

マリア・シュナイダーは映画の成功の陰で、以降は性的イメージのレッテルを貼られ、ドラッグまみれの壮絶な人生を送ることになります。

彼女の視点から描いた意義は共感するんですけれども、堕ちていく過程があまりにあっさりとしている。女優としての野心と1人の女性としてのトラウマ、その葛藤が描かれていても良かったのでは。