「その昔、旅に魅せられたバカな男がいたんだよ」マウンティオが“観光王”になるまでの軌跡

「売るべきものは最高の環境、日南の大自然だ」

マウンティオとは人か魔か。そんな自信たっぷりの態度と不遜な言葉に魅入られてしまった担当者は、「いきなり起業をしても警戒されるだけだから、まずは地域おこし協力隊から始めればいい」とアドバイスをくれた。

幸先のいいスタート。しかしマウンティオの人生は、常に大海をさまよう木ノ葉の如き先知れぬ旅である。それからすぐに、妊娠中の妻と共に日南市へ移住。

子供が誕生した頃には、地域おこし協力隊を飛び出して、新たな事業“レンタルマウンテンYAMA”の操業を開始することになっていた。展開が早い。

「日南に来て、いろいろな人に旅行会社をやりたいという話をしていたんだ。そんなときに、この山のオーナーと出会った。『今やっている農家民泊の宿をやめるから、君がやらないか』という話でね。
それから1カ月ぐらい考えた。ただ、このまま宿をやるだけでは面白くない。どういうコンセプトが正しいかとね。そして辿り着いた。売るべきものは最高の環境、日南の大自然だ。
宿だけでなく、山一つを丸ごと貸し切りできる1日1組限定の宿にしてはどうかと」

世界で誰も手を付けていないアイデアだ。そこから大急ぎで建物をリノベーションするなど準備して、いよいよオープン。観光王の会社「KING TOURISM JAPAN」の登記申請が受理されたその日。

2020年4月7日――。世界は新型コロナの炎に包まれた。時の内閣総理大臣、安倍晋三は史上初の緊急事態宣言を発令し、日本の国民は旅に出るどころか、家の外にも出られず、全国の街角から人の姿は消えた。

「とんでもないスタートだろ? でもそれも人生だ。悪いこともいいことも、すべては旅の宝物さ」

しかし、緊急事態宣言が明けると、このYAMAは大繁盛することになる。

(後編へ続く)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」9月11日号より